宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「取り込み中すまない」
「お……!」

 王子殿下と言いそうになって、彼はもうこの国の王なのだと慌てて口をつぐんだ。ジークヴァルトの膝を無理やり降りて、ハインリヒに向けて最大級の礼を取る。

「いい、私的な訪問だ。顔を上げてくれ」
「何の用だ」

 一国の王に向かって、ジークヴァルトは憮然とした態度で言った。驚いてその顔を見やると、ハインリヒを睨みつけている。

「用があるのはお前ではない」

 気に留めた様子もなく、ハインリヒはリーゼロッテに視線を向けた。王となって初めて対面する彼は、なんだか凄みが増している。

「リーゼロッテ嬢、君に頼みたいことがある」
「はい、何なりと」

 何も考えずに返事をすると、「話を聞いてからだ」とジークヴァルトの眉間のしわが深まった。

「夢見の巫女が不在の今、神殿から不満の声が上がっている。今まで巫女は王家直系の血筋から生まれてきた。だがピッパ王女にその力はない」
 そのため王家を不安視する者が増えているのだとハインリヒは付け加えた。

「夢見の巫女が……」

 その役目はクリスティーナが負っていたものだ。彼女が亡くなって、後継者がいないということだろう。そう理解して、すぐにルチアの存在を思い出した。ピッパ王女によく似た容姿の彼女は、王族の落とし(だね)だと推測しているリーゼロッテだ。

「あの……ルチア・ブルーメ子爵令嬢のことは……」
「ああ、彼女も含めて後継となり得る者を調査しているところだ。だがそれにはまだ時間を要する」

 恐る恐るした問いかけにあっさりと返されて、ルチアが王族の血を引くことは間違いないのだと知る。

「王妃の宿す子が、その(せき)(にな)っているかもしれないだろう?」

 警戒するようにジークヴァルトがリーゼロッテを腕に抱え込んだ。プライベートな場とはいえ、やはり王前だ。戸惑いながらジークヴァルトの顔を見上げるが、この手を振りほどくこともできなかった。

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