宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「聖女……わたくしの守護者は、また王城中の異形を(はら)ったのですか?」
「王城だけではない。あの日、聖女の力は神殿までも広がった」

 城から神殿までとなると、とてつもなく広い範囲だ。想像ができなくて、リーゼロッテはただ首をひねった。

「神官の中には、聖女の力を神聖視する者が多く現れている。君の存在は神殿の不満を抑えるのに十分だ」
「ですが本当にわたくしに務まるのでしょうか……」

 龍の言葉である神託に対して、そんないい加減な感じでいいのだろうか? ジークヴァルトの言う通り、リーゼロッテに夢見の力はない。時間稼ぎをしろと言われても、一体何をどうすればいいのか分からなかった。

「君はただ神事に出るだけでいい。祈りの泉に(つか)かるだけの簡単な仕事だ」

(なんだか怪しい副業を勧めるような台詞ね……)

 だがそれならば受けてもいいかと口を開きかけたリーゼロッテを、不機嫌なジークヴァルトの声が(さえぎ)った。

「彼女の体力はまだ回復していない」
「神事は一時間もかからない。とりあえず明日(こな)してもらえれば、その後は公爵家に帰っていい」

 戻る日が一日延びるだけだ。そう言われてジークヴァルトは、不満そうにしながらも口をつぐんだ。

「無理()いはしないが、神殿からも君を要望する声が上がっている。国の安泰(あんたい)のためと思って協力してくれないか?」

 王にそこまで言われては、断るなどできないだろう。

「承知いたしました。わたくしがお役に立つのなら、よろこんでお受けいたします」

 口元に笑みを浮かべたハインリヒと対照的に、ジークヴァルトの唇が引き結ばれた。

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