宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
     ◇
「ちょっとマテアス、リーゼロッテが消えたってどういうこと? ジークヴァルトも謹慎を命じられるだなんて、一体何がどうなったって言うのよ?」
「それはこちらが聞きたいくらいですよ」

 アデライーデは騎士として正式な任を受け、フーゲンベルク家に戻ってきた。謹慎を受けた公爵を見張るようにと、王命が下ったからだ。

 内容にまず驚いたが、そもそもジークヴァルトの姉であるアデライーデにやらせる任務ではなかった。身内が関わる事件では、どんなに優秀な騎士だろうと任務から外されるのが常識だ。そんなことを知らないハインリヒではないだろうに、なぜかアデライーデが指名を受けた。

「旦那様の話では、神事の最中にリーゼロッテ様がいなくなり、お探しするのをハインリヒ王がお止めになったそうです」
「何よそれ。ジークヴァルトは何をやってたの?」
「食ってかかった旦那様が、王に謹慎を食らったのですよ。(めい)(そむ)けばフーゲンベルク家を取り潰すとまで言われては、旦那様も引き下がざるを得ないでしょう? わたしこそ騎士団は何をやっているのかと問いたいですね」

 冷たく言われ、アデライーデは言葉を詰まらせた。クリスティーナ王女の不可解な死についても、ハインリヒ王はうやむやに終わらせた。反発するバルバナスも、王の言葉とあっては表立って真相を探ることができないでいる。

「バルバナス様は今も水面下で動いているわ。わたしだってここに来るまで、その任に当たっていたんだから。バルバナス様のことだもの。リーゼロッテの件も神殿が絡んでいるなら、放置はしないはずよ」
「……だとすると、アデライーデ様も旦那様と同様、王にまんまと動きを封じられた形ですね」

 はっとしてマテアスの顔を見る。ここに来る前にリーゼロッテのことを知っていたのなら、アデライーデは真っ先に調査に乗り出していたことだろう。

「それにアデライーデ様を盾に取れらたとなると、王兄(おうけい)殿下も動きづらくなるのでは?」
「バルバナス様は私情を挟んだりしないわ」
「だといいのですが」

 渋い表情のマテアスに、アデライーデも考え込んだ顔となる。

「ジークヴァルトは今どうしてるの?」
「一見、平静を保っておられますが……」
「……そう」

 託宣の相手が消えたのだ。本来なら、正気を失っても不思議ではない事態だった。

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