宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「とにかくわたしもでき得る限り情報を集めてみます。奥書庫で何か有益なことが見つかるかもしれません」

 王城で起きたことなど、公爵家の立場で探るにも限界がある。だがこのまま手をこまねいている訳にはいかなかった。

「わたしもバルバナス様と連絡を取ってみるわ」

 こうなればアデライーデも見張られていると考えた方がいいだろう。だがそれならそれでやりようはある。
 紙にペンを滑らせると、アデライーデは窓の外に向かって指笛を響かせた。ほどなくして二羽の鷹が舞い降りる。

「ミカル、あなたは(とりで)のバルバナス様に。ジブリル、あなたは念のためニコラウスにこれを届けて。さぁ、行きなさい!」

 (あし)の筒に簡書を仕込むと、アデライーデは鷹を真冬の空へと解き放った。翼を大きく広げ、二羽は鈍色(にびいろ)の雲間目指して、吸い込まれるように溶け込んでいく。

「リーゼロッテ……あなた、今どこにいるの……」

 対の託宣を受けた彼女は、必ずジークヴァルトの元へと帰ってくるはずだ。そうは思うが、その安否に不安が込み上げる。

 リーゼロッテが受けた託宣は、ジークヴァルトと婚姻を結び、次の龍の盾となる者を産むことだ。それは命が保証されるだけの話で、身の危険がないということではなかった。
 龍としては託宣の子が成せればいい。大怪我を負おうが、心に傷を作ろうが、それ以外はすべてお構いなしだ。

(ひどい目にあっていないといいけれど……)

 最悪の事態が頭をよぎるが、それ以上は考えたくもなかった。自分を含め公爵家が動けない今、騎士団の力を借りるしかない。例え国に逆らうことになるとしても。

「必ず見つけ出してみせるから」

 決意を固めるように、アデライーデは冬空を高く見上げた。

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