宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
     ◇
(あやしい植物のせいで、脳内突っ込みが口から駄々漏れていたなんて……)

 クソまずいキャンディは解毒剤だった。あの後ベッティの説明を受けて、リーゼロッテは恐怖に身を震わせた。少しずつ食事に混ぜることで徐々に思考を奪い、自分を意のままに操ろうとしていたのだ。
 ぼんやりとして無気力になっていたのもそのせいだったらしい。自分を(さら)ってきた青龍とやらは、とんだ下衆(げす)に違いない。

 あの日以来、日中はベッティが部屋に連れて来られるようになった。神官が廊下で見張っているため会話などはできないが、いてくれるだけで心強い。

(ミッションその一、しっかり食べる)

 ここから逃げ出すための算段を、ベッティとあれこれ打ち合わせした。いざという時に体が動かないのでは、足手まといになりかねない。状況確認はベッティがするので、リーゼロッテは落ちてしまった体力を取り戻すべく、まずは食べるようにと指令が下った。
 しかし危ないクスリ入りの食事は口にはできない。食べていいもの悪いもの、それはベッティが教えてくれることになっている。指一本はイエス、二本ならノーのサインだ。

 慣れない手つきを装って、ベッティがリーゼロッテに食事を給仕していく。ベッティは驚くほど演技派だ。おどおどしながら用意する様は、本当に何も知らない小間使いのようだ。

(二本、二本、一本……)

 見張りに見えないように、さりげなくベッティが指示を出す。結局、食べられるのは、オレンジひと欠けらのようだ。スープもパンも何かが仕込まれているらしい。

(これじゃますますやせ細りそうだわ)
 黙々とオレンジをかじると、リーゼロッテはそこで食べる手を止めた。

「今日はそれだけですか?」

 のぞき穴から神官が問いかけてくる。ローテーションでやってくる神官のうち、この男だけが口を開く。ほかの神官は無言で監視に徹するだけだ。

(ミッションその二。できるだけ会話をして情報を引き出す)

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