宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「だってこんなもの、わたくしの口に合わないもの。もっと甘いものが食べたいですわ」
「いえ、ここは規律ある神殿ですので、そういったものは……」
「ここは神殿なのね?」
「あ、いやっそのっ、そうだったりそうじゃなかったり……それはそうとそちらの野菜スープなどはすごく体に良いのですよ?」
「いやですわ。こんなまずいもの食べられません」
つんと顔をそらすと神官が悲しそうな瞳になる。
「それを食べていただけると、こちらとしてもありがたいのですが……」
どうやら食事に薬草が仕込まれていることを知っているらしい。半眼でにらみつけると、なぜか男は顔を赤くした。
「わたくしビョウのパイが食べたいです。サクサクとろとろのおいしいパイなら、いっぱい食べられそうですわ」
「えっ!? 今の時期にビョウなんて手に入らないですし……」
「ビョウじゃなきゃいやです。だってほかのものは喉を通らないんですもの」
涙目で見上げると、今度は見惚れたまま呆けてしまった。
「わかりました……聖女様のために何とかしてみます……」
(ミッションその三。ここにわたしがいるってことを外に知らせる)
季節外れのビョウなど、普段なら神殿が仕入れるはずもない。ベッティの話では、神殿で扱わない物を所望すれば、外部に不信な動きをにおわせられるとのことだった。
「もうひとつお願いしてもいいかしら?」
可愛らしく小首をかしげると、男はこくこくと頷いた。
「わたくしね、いつもアルフレートと一緒に眠っているの」
「アルフレート?」
「王都のお店で買ってもらった大きなクマの縫いぐるみよ。赤いリボンのついたとっても可愛い子なの。わたくしアルフレートがいないと、ひとりじゃ夜も眠れなくって……」
心細そうに瞳を潤ませる。
「そのアルフレートは今、どこにいるんですか?」
「公爵家のお部屋ですわ」
難しそうな顔をして、男は黙り込んだ。拒否というより、考え込んでいる表情だ。
(これはもうひと押しね)
瞳にもりもりと涙をためて、渾身の上目遣いでお願いする。
「ひとり寝はさみしいの……わたくしのためになんとかしていただけませんか……?」
「わっかりました! 必ずやアルフレートを連れてきます! このオスカーにお任せをっ」
(うわ、このひと、自分から名前言っちゃったわ)
見張り役としていかがなものか。悪の組織はもしかすると、人員不足なのかもしれない。
「ありがとうございます、オスカー様。わたくしとってもうれしいですわ」
「はっ、つい名乗ってしまった……! あの聖女様、できればこのことは内密に……」
「では、ふたりだけの秘密ですわね」
にっこりとほほ笑むと、オスカーの瞳にめろめろのハートマークが飛び散った。
「いえ、ここは規律ある神殿ですので、そういったものは……」
「ここは神殿なのね?」
「あ、いやっそのっ、そうだったりそうじゃなかったり……それはそうとそちらの野菜スープなどはすごく体に良いのですよ?」
「いやですわ。こんなまずいもの食べられません」
つんと顔をそらすと神官が悲しそうな瞳になる。
「それを食べていただけると、こちらとしてもありがたいのですが……」
どうやら食事に薬草が仕込まれていることを知っているらしい。半眼でにらみつけると、なぜか男は顔を赤くした。
「わたくしビョウのパイが食べたいです。サクサクとろとろのおいしいパイなら、いっぱい食べられそうですわ」
「えっ!? 今の時期にビョウなんて手に入らないですし……」
「ビョウじゃなきゃいやです。だってほかのものは喉を通らないんですもの」
涙目で見上げると、今度は見惚れたまま呆けてしまった。
「わかりました……聖女様のために何とかしてみます……」
(ミッションその三。ここにわたしがいるってことを外に知らせる)
季節外れのビョウなど、普段なら神殿が仕入れるはずもない。ベッティの話では、神殿で扱わない物を所望すれば、外部に不信な動きをにおわせられるとのことだった。
「もうひとつお願いしてもいいかしら?」
可愛らしく小首をかしげると、男はこくこくと頷いた。
「わたくしね、いつもアルフレートと一緒に眠っているの」
「アルフレート?」
「王都のお店で買ってもらった大きなクマの縫いぐるみよ。赤いリボンのついたとっても可愛い子なの。わたくしアルフレートがいないと、ひとりじゃ夜も眠れなくって……」
心細そうに瞳を潤ませる。
「そのアルフレートは今、どこにいるんですか?」
「公爵家のお部屋ですわ」
難しそうな顔をして、男は黙り込んだ。拒否というより、考え込んでいる表情だ。
(これはもうひと押しね)
瞳にもりもりと涙をためて、渾身の上目遣いでお願いする。
「ひとり寝はさみしいの……わたくしのためになんとかしていただけませんか……?」
「わっかりました! 必ずやアルフレートを連れてきます! このオスカーにお任せをっ」
(うわ、このひと、自分から名前言っちゃったわ)
見張り役としていかがなものか。悪の組織はもしかすると、人員不足なのかもしれない。
「ありがとうございます、オスカー様。わたくしとってもうれしいですわ」
「はっ、つい名乗ってしまった……! あの聖女様、できればこのことは内密に……」
「では、ふたりだけの秘密ですわね」
にっこりとほほ笑むと、オスカーの瞳にめろめろのハートマークが飛び散った。