宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
場にそぐわない穏やかな声がしたとき、月明かりが窓から差し込んだ。白く浮き出した神官服の男に、リーゼロッテは息を飲む。
「あなたは……」
部屋の片隅でしゃがみこんだまま、美しい顔立ちの男を見上げた。いつか会った神官だ。このまなざしを向けられる不快感を、リーゼロッテはよく覚えている。
「ご記憶いただけているようですね。リーゼロッテ・ラウエンシュタイン」
「……わたくしはリーゼロッテ・ダーミッシュですわ」
「貴族の決めた籍に、意味などありません。貴女は紛れもなく星読みの末裔だ」
そこで言葉を切ると、男は口元に笑みを刷いた。確か盲目の神官だった。なのに、こんなにも刺すような視線を感じるのはなぜなのか。
震えを止められないまま、決死の思いで立ち上がった。このまま相手の好きになどさせてなるものか。
「わたくしをこんなところに閉じ込めて、一体どういうおつもりですか? 神官と言えど捕まれば公平に裁かれます。このまま逃げ切れるなど甘い考えですわ」
「さて、それはどうでしょう。わたしは選ばれた人間。いえ、まさに選ぶ側――青龍そのものと言ってもいい」
「何を馬鹿げたことを」
「信じられないのは仕方のないことですが、いずれ貴女にも理解できましょう」
「理解などさせるつもりはないくせに……!」
恐怖を押し殺して、リーゼロッテは男を睨み上げた。
「あなたのしていることは犯罪です。神職に身を置く立場でありながら、わたくしにあんな薬を盛るだなんて……! 気が触れているとしか思えませんわ」
「それは心外ですね。初めての貴女でも楽しめるようにと、わたしなりの配慮だったのですが」
「ふざけないで……!」
怒りのあまり声が震えた。だが常識が通用する相手ではない。冷静な男の物言いが、得体の知れなさを余計に膨れ上がらせる。
「あなたは……」
部屋の片隅でしゃがみこんだまま、美しい顔立ちの男を見上げた。いつか会った神官だ。このまなざしを向けられる不快感を、リーゼロッテはよく覚えている。
「ご記憶いただけているようですね。リーゼロッテ・ラウエンシュタイン」
「……わたくしはリーゼロッテ・ダーミッシュですわ」
「貴族の決めた籍に、意味などありません。貴女は紛れもなく星読みの末裔だ」
そこで言葉を切ると、男は口元に笑みを刷いた。確か盲目の神官だった。なのに、こんなにも刺すような視線を感じるのはなぜなのか。
震えを止められないまま、決死の思いで立ち上がった。このまま相手の好きになどさせてなるものか。
「わたくしをこんなところに閉じ込めて、一体どういうおつもりですか? 神官と言えど捕まれば公平に裁かれます。このまま逃げ切れるなど甘い考えですわ」
「さて、それはどうでしょう。わたしは選ばれた人間。いえ、まさに選ぶ側――青龍そのものと言ってもいい」
「何を馬鹿げたことを」
「信じられないのは仕方のないことですが、いずれ貴女にも理解できましょう」
「理解などさせるつもりはないくせに……!」
恐怖を押し殺して、リーゼロッテは男を睨み上げた。
「あなたのしていることは犯罪です。神職に身を置く立場でありながら、わたくしにあんな薬を盛るだなんて……! 気が触れているとしか思えませんわ」
「それは心外ですね。初めての貴女でも楽しめるようにと、わたしなりの配慮だったのですが」
「ふざけないで……!」
怒りのあまり声が震えた。だが常識が通用する相手ではない。冷静な男の物言いが、得体の知れなさを余計に膨れ上がらせる。