宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「くっそ、高いな」
上空に踊る風船を見上げ、苛立ち任せに舌打ちをする。近くの太い庭木に飛びついて、風に巻き上げられそうなところを、なんとか腕を伸ばして捕まえた。
(なんだ、これは)
風船に括りつけられていた袋には、一枚の葉が入っていた。青臭い香りが鼻をついて、枝の上、強い眩暈が一瞬襲う。瞬時に袋を閉じて、半ば落ちるようにカイは木を下った。
降り立った地面では、バルバナスが待っていた。これは何でもないと、誤魔化せそうにない状況だ。
「そりゃあなんだ? 神殿の方から飛んできただろう。見せてみろ」
「おやめになった方がいいですよ。これは今問題になっている媚薬の原料です」
「なんだと……?」
カイから袋をむしり取ると、バルバナスは鼻先に近づけた。顔をしかめてから、後方に向けて大声で叫ぶ。
「ランプ! ランプレヒト!」
「ハイハイ、ごヨウでしょうカぁ? マッタく、ばるばなすサマもヒトづかいのアライ。あでりーサマがイナイとホントめんどーデス」
「文句垂れてねぇで早く来い!」
茂みの間から姿を現したのは、ひとりの少年だった。王族に仕える小間使いの格好をしている。
「やぁ、はじめまして。君がかの有名な騎士団の薬師かな?」
「コレはコレは、かい・でるぷふぇるとサマ。忌み児サマとおアイできるナンテこうえいデス」
バルバナスが表に出したがらないが、騎士団には腕のいい薬師がいると聞いていた。なんでも騎士団が保護した異国の男と言う話だ。だが見た目がずっと少年のままで、年を取らないバケモノだとの噂もあった。
「くだらねぇこと言ってねぇで、これを見ろ」
「ムム、これハ……?」
受け取った袋を覗き込むと、瞬時にランプレヒトの顔つきが変わった。取り出した葉をしげしげと眺めやる。萎れてきているそれの匂いを嗅ぎ、何を思ったのかいきなり端っこにかじりついた。
上空に踊る風船を見上げ、苛立ち任せに舌打ちをする。近くの太い庭木に飛びついて、風に巻き上げられそうなところを、なんとか腕を伸ばして捕まえた。
(なんだ、これは)
風船に括りつけられていた袋には、一枚の葉が入っていた。青臭い香りが鼻をついて、枝の上、強い眩暈が一瞬襲う。瞬時に袋を閉じて、半ば落ちるようにカイは木を下った。
降り立った地面では、バルバナスが待っていた。これは何でもないと、誤魔化せそうにない状況だ。
「そりゃあなんだ? 神殿の方から飛んできただろう。見せてみろ」
「おやめになった方がいいですよ。これは今問題になっている媚薬の原料です」
「なんだと……?」
カイから袋をむしり取ると、バルバナスは鼻先に近づけた。顔をしかめてから、後方に向けて大声で叫ぶ。
「ランプ! ランプレヒト!」
「ハイハイ、ごヨウでしょうカぁ? マッタく、ばるばなすサマもヒトづかいのアライ。あでりーサマがイナイとホントめんどーデス」
「文句垂れてねぇで早く来い!」
茂みの間から姿を現したのは、ひとりの少年だった。王族に仕える小間使いの格好をしている。
「やぁ、はじめまして。君がかの有名な騎士団の薬師かな?」
「コレはコレは、かい・でるぷふぇるとサマ。忌み児サマとおアイできるナンテこうえいデス」
バルバナスが表に出したがらないが、騎士団には腕のいい薬師がいると聞いていた。なんでも騎士団が保護した異国の男と言う話だ。だが見た目がずっと少年のままで、年を取らないバケモノだとの噂もあった。
「くだらねぇこと言ってねぇで、これを見ろ」
「ムム、これハ……?」
受け取った袋を覗き込むと、瞬時にランプレヒトの顔つきが変わった。取り出した葉をしげしげと眺めやる。萎れてきているそれの匂いを嗅ぎ、何を思ったのかいきなり端っこにかじりついた。