宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
◇
まだ外が暗い中、リーゼロッテは毛布に包まったまま椅子で膝を抱えていた。またあの男が来るのではないかと思うと、無防備に眠るのが怖かった。
深い眠りにつくこともままならなくて、座ったままうとうとする毎日だ。空腹も当たり前のようになっていて、何かをする気力も体力も湧いてこない。
暗がりでうつらうつらとしていると、ふと耳に何か音が届いた。外から聞こえてくるそれは、はじめは気のせいかとも思った。しかし音は少しずつ近づいてくる。不思議に思って格子の間から、リーゼロッテは窓を少しだけ押し上げた。
隙間のできた窓の下から、冷たい風に乗ってそれは聞こえてくる。やけに軽快な音楽だ。そう、まるで行進曲のような。
つってけてー、つってけてー、つってけてけてけ、つってけてー
つってけてー、つってけてー、つってけてけてけ、つってけてー……
繰り返される音楽は、どんどんこちらに近づいてくる。自分はとうとう気がおかしくなったのだろうか? 窓の桟に現れた行列に、リーゼロッテは自分の正気を疑った。
きっちりと隊列を組んで、きのこが楽器を奏でている。鼓笛隊を思わせる行列は、リーゼロッテの前まで行進してきた。
先頭のしいたけが指揮棒を振って、その後ろをラッパを吹いたえのきが続く。しめじが上下に旗を振り、太鼓を持つのはエリンギだろうか。最後にネバネバしたなめこが数個、飛び跳ねながらついてくる。
つってけてー、つってけてー、つってけてけてけ、つってけてー
『ぜんたーい、とまれ!』
いち、に、のかけ声で、鼓笛隊は綺麗に行進を止めた。ごしごしと目をこするも、隊列は行儀よく目の前に並んでいる。
『お初にお目にかかりまする。貴女様は星読みの姫君でいらっしゃるかな?』
「え? 星読みの末裔とは言われたことはあるけれど……」
『よかった! 風の噂で姫君がひもじい思いをなさっていると聞き、仲間を集めてこうしてはせ参じた次第であります。姫君にお会いできたこと、心よりうれしく思いまする』
『うれしうれし!』
「それはわざわざありがとう……?」
よく分からないが、はるばる会いに来てくれたのだ。礼を言わないわけにはいかないだろう。
まだ外が暗い中、リーゼロッテは毛布に包まったまま椅子で膝を抱えていた。またあの男が来るのではないかと思うと、無防備に眠るのが怖かった。
深い眠りにつくこともままならなくて、座ったままうとうとする毎日だ。空腹も当たり前のようになっていて、何かをする気力も体力も湧いてこない。
暗がりでうつらうつらとしていると、ふと耳に何か音が届いた。外から聞こえてくるそれは、はじめは気のせいかとも思った。しかし音は少しずつ近づいてくる。不思議に思って格子の間から、リーゼロッテは窓を少しだけ押し上げた。
隙間のできた窓の下から、冷たい風に乗ってそれは聞こえてくる。やけに軽快な音楽だ。そう、まるで行進曲のような。
つってけてー、つってけてー、つってけてけてけ、つってけてー
つってけてー、つってけてー、つってけてけてけ、つってけてー……
繰り返される音楽は、どんどんこちらに近づいてくる。自分はとうとう気がおかしくなったのだろうか? 窓の桟に現れた行列に、リーゼロッテは自分の正気を疑った。
きっちりと隊列を組んで、きのこが楽器を奏でている。鼓笛隊を思わせる行列は、リーゼロッテの前まで行進してきた。
先頭のしいたけが指揮棒を振って、その後ろをラッパを吹いたえのきが続く。しめじが上下に旗を振り、太鼓を持つのはエリンギだろうか。最後にネバネバしたなめこが数個、飛び跳ねながらついてくる。
つってけてー、つってけてー、つってけてけてけ、つってけてー
『ぜんたーい、とまれ!』
いち、に、のかけ声で、鼓笛隊は綺麗に行進を止めた。ごしごしと目をこするも、隊列は行儀よく目の前に並んでいる。
『お初にお目にかかりまする。貴女様は星読みの姫君でいらっしゃるかな?』
「え? 星読みの末裔とは言われたことはあるけれど……」
『よかった! 風の噂で姫君がひもじい思いをなさっていると聞き、仲間を集めてこうしてはせ参じた次第であります。姫君にお会いできたこと、心よりうれしく思いまする』
『うれしうれし!』
「それはわざわざありがとう……?」
よく分からないが、はるばる会いに来てくれたのだ。礼を言わないわけにはいかないだろう。