宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
『途中、雪深い森で迷ってしまい、到着が遅れましたことお詫び申しあげまする』
『『『『お詫び申し上げまする!』』』』

 しいたけ隊長が深々と頭を下げると、残りのきのこたちも同様に頭を下げた。

「そんな、頭を上げて。外は寒かったでしょう? 会いに来てくれただけでもうれしいわ」
『なんたるやさしいお言葉! 至極(しごく)のよろこび!』
『よろこびよろこび!』

 合いの手を入れながら、ぴょんこぴょんことなめこが跳ねる。

『道中、かの方の導きがなかったら、我らはもっと森を彷徨(さまよ)っていたやもしれませぬ』
「かの方の導き?」

 隊列が割れ、その後ろ窓の外に影が()す。ぬっと現れた白い(かたまり)は、何と(にわとり)のマンボウだった。

「マンボウ!?」
「おえっ!」

 首を下げて窓の下から顔だけをのぞかせる。両手を伸ばすとマンボウは、すりすりと頬を寄せてきた。

「どうしてマンボウがここに……」
「おえっ」
『人の王に呼び戻されたとおっしゃられておりまする』
「人の王……? ハインリヒ王のことかしら?」
『かの方はこうもおっしゃられておりまする。この(やしろ)に神おらず、支配するは憤怒(ふんぬ)(うろこ)
「憤怒の鱗……?」
「おえっ」

 太眉をきりりとさせて、マンボウはどや顔で頷いた。そのタイミングでリーゼロッテの腹の虫がきゅるると響く。

『おお、大事な役目を忘れるところでありました! 姫君にあらせられましては、空腹でさぞやつらき思いをされたことでしょう。我らきのこの中でも、滋養高き精鋭を集めました。どうぞお好きに召し上がりくだされませ』
「……え? あの、でも、だって」

 隊長の言葉に耳を疑った。このしゃべるきのこたちを食べろと言うのか。

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