宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
     ◇
 朝餉(あさげ)の盆を手に、マルコはミヒャエルの私室の扉を遠慮がちにたたいた。

「ミヒャエル様、朝食をお持ちしました」

 マルコは神殿に来て、まだ間もない十五の少年だ。貴族では成人とみなされる年ではあるが、神官としてはまだまだ半人前だ。見習いとして、マルコは慣れない日々を送っている。

 今任されているのは司祭(しさい)枢機卿(すうきけい)の世話係だった。神殿では地位の高い人物なので、来て早々の抜擢(ばってき)に面食らったのは言うまでもない。

「お加減はいかがですか……? お食事は食べられそうですか?」

 初めて会った時からミヒャエルは体調が悪いようだった。一向に返事が返ってこない部屋の中は、物音ひとつ聞こえてこない。不安が膨れ上がり、マルコは許可なく扉を開けた。

「ミヒャエル様……!」

 すぐそこのソファに座り、ミヒャエルはぐったりとその背を預けていた。以前のふくよかな体は見る影もなく、醜くやせ衰えている。指先から腕半ばまで包帯が巻かれ、その右腕を押さえながら苦悶の表情を浮かべていた。

 慌てて駆け寄り、盆を近くのテーブルに乗せた。脂汗の浮く額に手を当て、その熱さに青ざめる。

「今すぐ医師を呼んでまいります!」
「余計なことはするな」

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