宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
     ◇
 厳重に閉ざされた王城の一室で、バルバナスを囲んでの作戦会議がなされていた。集められたのは騎士団の中でも、重要任務を任される精鋭ばかりだ。カイとエーミールはそれに加わりつつも、やりとりを部屋の(すみ)で見守っていた。

「お前らを集めた理由はほかでもない。媚薬の原料となる植物が、神殿で栽培されている疑惑が上がっている」
「ですが確証はないんですよね?」
「証拠は葉っぱ一枚だが、現場を押さえる事ができさえすれば、向こうも言い逃れはできねぇ。ランプの分析じゃあ、(くだん)の媚薬であることに間違いはない」
「それに媚薬がらみの事件を洗い直した所、共通点に特定地域の神殿がいくつか浮上しています。巧妙に場所を変えているようで、決定的証拠は得られませんでしたが……」
「今回は状況証拠で十分だ。勧告なしで一気に捜査に入る。誰ひとりとして逃がさないよう、各自役割を頭に叩き込め」

 詳細な地図を広げ、内部の施設を確認していく。何しろ神殿の敷地は広い。祭事を行う本神殿のほかに、神官たちの居住区や物資をしまう倉庫、作業用の家畜がいる(むね)、野菜畑や薬草畑などが、広大な土地にあちこち散らばっていた。

「決行は二日後、日の出と共になだれ込む。第一班が居住区を取り押さえ、神官たちが部屋にいるところを拘束する。不審な動きをする奴がいたら容赦なくひっ捕らえろ。神官どもの動きを封じた後、第二班が施設内を(くま)なく調査する」

 地図を指さしながら、騎士ひとりひとりに役割を支持していく。適材適所で迷いなく割り振れるのは、それぞれの実力を過小評価なく把握しているからだ。
 騎士たちも真剣な眼差しで、バルバナスの話に聞き入っている。そこには信頼と尊敬が垣間見え、騎士団長としてバルバナスが慕われていることが伺えた。

「問題の媚薬が栽培されているとしたら、もっと奥、背後に広がる森ん中だ。この方面にごく限られた神官の行き来が確認されている。最後の班の指揮はオレが取る。アデライーデとニコラウス、ランプレヒトもついて来い。それに新入り、お前も同行しろ」

 エーミールを一瞥(いちべつ)して、バルバナスはすぐに他の騎士に指示をし始める。それを(さえぎ)るように、奥で黙って聞いていたランプレヒトが口を開いた。

「あでりーサマは、ふーげんべるく家に里帰りちゅうデスよ?」
「ちっ、んなことは分かってんだよ」

 いつもの(くせ)で名を呼んでしまったバルバナスに、みなが生温かい目を向ける。バルバナスが睨みつけると、一同はさっと視線をそらした。

「オレはオレで勝手にやらしてもらいますよ。騎士団の邪魔になることは誓ってしませんので」
「好きにしろ」

 カイに向けて吐き捨てるように言うと、バルバナスは作戦会議の終わりを告げた。

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