宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「何なんだ、この騒ぎは」
「確かに珍しいっすね、こんなにいきなり異形が暴れ出すなんて」

 言いながら異形の者を次から次へと(はら)っていく。しかし進むほどにその数が増えてくる。異形に()かれて錯乱(さくらん)する者もいて、王城内は混乱を極めていた。

「くそ、きりねぇな」

 息を切らすニコラウスの横で、エーミールはまだまだ平然としている。剣技は互角といったところだが、異形を祓う力に関してはエーミールの方が随分と上のようだ。

「エーミール様、めっちゃ頼りになる!」
「口よりも体を動かせ!」

 廊下を駆け抜け、エーミールが異形を祓っていく。その背を追いかけながら、ニコラウスは人命救助に回ることにした。異形を祓えば憑かれた者も(じき)に回復する。とりあえず怪我をしないようにと、倒れ込む人間を介抱していった。

「何だよ、ほんときりねぇんだけど!」
「ああ、まさに(いたち)ごっこだな」

 さすがのエーミールも限界が近づいてきている。互いに背を預けながら、囲む異形を睨みつけた。

「……ニコラウス、あの気配を感じないか?」
「言われてみればそうっすね」

 うすく辺りに漂う不穏な瘴気(しょうき)が、ぴりぴりと肌を焼きつけてくる。これはいつかグレーデン家に現れた、星を堕とす者と呼ばれる異形の気配だ。

「このままじゃ、マジでやばいっすね」

 力尽きれば自分たちが取り憑かれる可能性もある。帯剣した騎士が錯乱するのは、何があっても避けたいところだ。

 万事休(ばんじきゅう)すかといったところで、一気に目の前の異形が祓われた。

「バルバナス様!」
「お前ら、異形の対処は後回しだ!」
「へ? でもこの騒ぎをほっとくなんて……」
「王城の近衛騎士どもに任せておけばいい! 騎士団員、今すぐ全員集めてこい!」
「ええっ、そんな!?」

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