宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
      ◇
「ミヒャエル司祭枢機卿が失踪した?」
「世話をしていた者の話では今朝までは私室にいたそうですが、どこを探してもいないと神殿で騒ぎになっています。それにずっと体調が悪かったというのはどうやら本当のようですね」

 カイの報告にハインリヒは眉をひそめた。
 新年を祝う夜会での異形の騒ぎ。フーゲンベルク家でジークヴァルトが襲われた事件。これらを引き起こした首謀者であるとの疑いが、ミヒャエルにはかけられている。証拠がそろわず泳がせていたが、体調が悪いと神殿に籠って、最近ではずっと姿を現すこともなかったのだ。

(ここに来ての失踪か……)

 明日はイジドーラ王妃の誕生日を祝う夜会が開かれる。そのことにハインリヒは胸騒ぎを覚えた。
 今までの言動を顧みると、必要以上にミヒャエルは王妃に固執していた。それが分かっていながら、ディートリヒ王はミヒャエルを野放しにしたままだ。

「カイ……明日は義母上を頼む」
「もちろんです、オレにお任せください」

 叔母であるイジドーラをカイは常に最優先にしている。そのカイがそばにいれば安心だろう。そう思うものの胸に残る一抹の不安を、ハインリヒは拭い去ることができなかった。

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