宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
     ◇
 神殿奥に進むバルバナスの後を続いていたとき、エーミールの視界の端で何かが動いた。廊下の窓の外、リープリングを連れたカイが茂みの奥に消えていく。咄嗟に開けた窓枠を越え、エーミールは外へと降り立った。

「エーミール様? どこ行くんすか、そっちじゃないですよ!」

 ニコラウスの声を無視して、そのままカイの姿を追った。雪の中しばらく行くと、地図上にはなかった(みち)が現れる。

「うおっ、怪しい小路発見」
「なぜついてきた」

 面倒くさそうに言うと、ニコラウスはがりがりと頭をかいた。

「いや、実はバルバナス様から、エーミール様の手助けをするよう言われてまして……」
「手助けを? 一体何のだ」
「ですから妖精姫の救出ですよ」

 一瞬足を止め、エーミールはニコラウスを振り返った。

「大公がなぜそんなことを」
「多分、というか絶対そうなんすけど、バルバナス様は早くアデライーデに戻ってきてほしいんですよ。妖精姫のことが片付かないと、王命は解けそうにないですから」

 アデライーデはハインリヒの命令で、公爵家でジークヴァルトを見張っている。だが事実上の拘束だ。

「大公とアデライーデ様……ふたりはやはり恋仲なのか?」
「いえ、それがさっぱり。オレが見ている限り、ふたりはまだ清い仲ですね」

 その返事にエーミールは眉根を寄せた。バルバナスはアデライーデを一体どうしたいと言うのか。
 王妃の離宮でアデライーデが大怪我を負わされた後、バルバナスは彼女を攫って行った。それ以来ずっとそばに置いたまま、決して離そうとはしない。そのことも王族へ不信を抱く原因のひとつだ。

 言っているうちに進む路が二股に分かれた。先を見るもカイの姿はすでにない。雪でも積もっていれば足跡がついたのだろうが、石畳の小路の下は温泉水が引かれている。雪は溶ける仕様なので、カイの行った方向がつかめない。

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