宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「なんだあの建物は?」
「地図には載ってなかったっすね」

 勇み足で進もうとするエーミールを制して、カイは遠くに耳を澄ませた。神殿の方角からふたり連れの神官が慌てたように駆けてくる。ランタンを手に持ち、ふたりとも白い頭巾をかぶっていた。

「わぉ、怪しさ大爆発……」
「しっ」

 漏れた呟きを咎められ、ニコラウスは自身の口をふさいだ。背の低い神官が鍵を開け、ふたりは建物の中へと入っていった。しかし間を置かずに、扉から飛び出してくる。来た時以上に慌てている様子に、エーミールは眉をひそめた。

「何かあったのか……?」
「みたいっすね」

 だがこの奥まった場所に、バルバナスたちが先に到着したとも思えない。状況が見えなくて、エーミールとニコラウスはその様子を、息を押し殺しながら見守った。
 扉を乱暴に閉めた神官たちが来た道を戻ろうとする。それを目で追っていたエーミールとニコラウスを置いて、突然カイが駆け出した。
 俊足で神官の前に躍り出る。手刀を食らわせ、あっけなく男ふたりを昏倒させた。

「おい! いきなり単独行動に出るな。他に仲間がいたらどうする」
「いたら今頃出てきてるって」

 間近で人の気配は感じない。言いながらカイは、神官から頭巾をはぎ取った。

「このふたりは確か神官長派の……」
 考え込むようにつぶやいて、カイはニコラウスの顔を見上げた。

「ブラル殿、悪いんだけど建物の中まで運んでくれる?」
「ああ、このままじゃ凍死しますよね」

 怪しい奴には事情聴取が必要だ。その前に死なれては問題となる。神官を担いでニコラウスは建物の中へと運んでいった。
 降ろすなりカイは神官服をはぎ取った。その上で、動けないようロープで拘束していく。

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