宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「どっちに行くかだな……」
「方向からするに右は神殿側、左は森側ですかね」
「しっ! 誰か来る」

 カイの静止に緊張が走る。慌てた様子の神官が四人、右手の廊下からこちらに小走りに来るのが見えた。

「聖女様はご無事か?」
「今ちょうど確認しに行くところでした」

 問われるも咄嗟に言葉が返せないでいるふたりを横に、カイはしゃがれた声で答えた。先程外で気絶させた神官の声真似だ。

「何をもたもたしている、早くせねば騎士団に見つかってしまうではないか!」

 言うなり神官たちは、先程までカイたちが来た方向に進み始めた。道案内よろしく、三人はその後をついていく。

 一番偉そうな神官が長い廊下の途中で足を止めた。先程オスカーを隠した柱がすぐそこにある。押し込んだ足が少しだけ先を覗かせていた。

(やっべ、気づかれたらアウトだ)

 この神官たちは(さら)った聖女の元に向かう気でいる。そこで気絶しているオスカーが見つからないようにと、なんとなくを装ってニコラウスは自分で壁を作った。

 神官のひとりが鍵の束を何もない壁に差し込んだ。すると隠し扉が現れる。

「……お前、見ない奴だな」
 ふいに後方にいた別の神官が、エーミールに向けて訝しげに問う。扉を開けた神官もつられるように振り返った。

 エーミールは神官と言うにはあまりにも姿勢良く立っている。歩く時もきびきびとしていて、立居振る舞いが騎士そのものだ。

「い、今はそんな場合じゃ……」
 ニコラウスが慌てたように割り込んだ。声バレしないようにと、小声でまくし立てる。

「お前は……オスカーか?」
「そうです。ワタシはオスカーです」
「先ほどから気になっていたが……どうしてそんなに血まみれなんだ?」
「さっきよそ見してたら壁にぶつかって鼻血が……」
「ふん、お調子者振りは相変わらずだな」
「イヤ、マッタクモッテオッシャルトオリデ」
「早く聖女様の元へ」

 ボロが出ないようにと、カイがしゃがれ声で助け舟を出す。こちらは背を丸めた老人風で、知らなければ誰もが騙されそうだ。神官たちも違和感のないまま会話をしている。

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