宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
     ◇
 拍子抜けするほどあっさりと、神殿への侵入が果たせた。裏手の小川付近の壁は高いものの、備え付けられた裏門はあまりにも脆弱(ぜいじゃく)だ。辺りには見張りも置かれておらず、マテアスとジークヴァルトは森の中の小路を進んだ。

「路は地図通りのようですねぇ。雪も積もってなくてこれ幸い……と言いたいところですが、旦那様、ゆめゆめ油断なさいませんように」
「ああ、分かっている」

 しかめ面のまま、ジークヴァルトは歩を進めていく。気が(はや)るのは分かるのだが、どんどん速足になっていた。

「旦那様、少しペースを落としてください。まだ日が落ちて一時間も経ちません。神殿内の混乱はこれからです。ここぞという時へばっていては仕方ないでしょう?」

 このルートを辿ればそう時間もかからず目星をつけた場所に到達できる。そこにリーゼロッテがいないのなら、それはその時次の手を打つまでだ。

 それでもジークヴァルトの歩は止まらない。目立つため、明かりは最小限にしている。この暗い森の中、小道を辿る足の感触だけが頼りだ。そこをもってしてこの速度で進むジークヴァルトに、呆れとすごさを感じるマテアスだった。

 そのジークヴァルトの足が突然止まった。

「マテアス」
「ええ、何やら不穏な気配ですねぇ」

 小路の先から異形たちが近づいてくるのが分かる。この距離からでも相当数だと感じ取れた。

「ですが……行くべき道は間違っていないようですねっ」

 先に駆けだしたジークヴァルトに続いて、マテアスも異形の黒山に突っ込んでいった。視界が遮られるほどに、次から次に異形の者が迫ってくる。
 それを祓いながらふたりは小路を進んでいった。異形たちが行く手を阻み、迂回させようと邪魔をする。この進む先に行かせまいとの意思が伺えた。だがどれも弱い異形ばかりだ。危なげなくふたりは路なりに進んでいく。

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