宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「マンボウ!?」

 いつもマンボウが来るのは夜明け前だけだ。こんな夜にやってくるのはめずらしい。

「こんな時間に来て寝なくていいの?」
「オエッ!」

 窓を開けて下に隙間を作ると、マンボウは首を曲げて覗き込んできた。知恵の輪を窓辺に置き、リーゼロッテはその頬をやさしく撫でた。

「オッオエ――!」
「え? あ、ちょっと待ってマンボウ!」

 羽をばたつかせ、いきなりマンボウが知恵の輪の片方を(くちばし)で拾い上げた。そのまま羽を広げて、漆黒の森に向かって猛然と走り始める。

「ま、マンボウ……」

 唖然としてその背を見送った。咥えた知恵の輪が緑の尾を引いて、やがてその軌道は暗闇に溶けて見えなくなっていく。

「あの知恵の輪、異形の者が寄ってくるってカイ様が……」

 だがここは神殿の敷地内だ。ここに来てから異形を見かけないので、マンボウも安全かもしれない。

 窓辺にぽつりと残された知恵の輪を見やる。(つい)と引き離されたその姿は、まるで自分とジークヴァルトのようだった。

「マンボウ……失くさずまた持ってきてくれるかしら……」

 さみしくて、リーゼロッテはしゅんとうつむいた。

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