宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
◇
リーゼロッテの部屋から戻る途中、神官たちの話に耳をそばだてた。ベッティにあてがわれた部屋は、下っ端神官たちのいる並びのうんと奥の物置部屋だ。
下女とは言え女が神殿内にいることを知られたくないようで、覆面神官たちにフードを目深にかぶらされている。表向きは下働きの少年ということになっていた。
最近では警戒心も薄れたのか、ベッティのここら辺りの行き来は自由だった。神官たちは迎えに来て、目隠しをしたままリーゼロッテの元へと連れていくだけだ。
「なあ、知ってるか? 午後になってから王城で異形の者がまた騒ぎ出しているそうだ」
「ここ一、二年、なんだかそんな話が多いな」
のんびりとした口調のそんな会話が耳に入ってくる。ここ神殿では、王城の噂話はすべて他人事だ。そこはそれ、お互い様と言ったところか。
「そういえば、移動用の馬が一頭逃げ出したって聞いたけど、あれどうなったんだ?」
「それがまだ見つからないみたいでさ。厩舎担当が必死になって探してるけど、この雪の中だからなぁ」
「ああ、もうどこかで行き倒れたりしてるのかもな」
そんな神官たちの横を素早く通り、ベッティは急ぎ部屋へと向かった。夜半に神殿内の調査を行って、早朝にはリーゼロッテの元に行かなくてはならない。
最近では動物たちが食材を運んでくれるので、調達の手間が省けるだけでもありがたい。この時間に一度仮眠を取って、再び動き出す毎日を過ごしているベッティだった。
ふと遠くから怒号が聞こえてくる。それも大人数だ。ベッティは長く伸びる廊下の向こう、神殿の方向に耳を澄ませた。
喧騒、悲鳴、大勢のひとの行き交う気配。
神経を集中して、そんなことを感じ取る。その時遠くの廊下を、騎士服姿の人間が複数横切った。
(騎士団が来ている……!)
神殿の奥まで神官以外の人間は足を踏み入れることはない。来るべき時が来たのだ。ベッティは駆け足で部屋へと戻った。
掃除道具の下から仕事道具をかき集める。その袋を背負い、気配を殺してリーゼロッテの元へと向かった。
リーゼロッテの部屋から戻る途中、神官たちの話に耳をそばだてた。ベッティにあてがわれた部屋は、下っ端神官たちのいる並びのうんと奥の物置部屋だ。
下女とは言え女が神殿内にいることを知られたくないようで、覆面神官たちにフードを目深にかぶらされている。表向きは下働きの少年ということになっていた。
最近では警戒心も薄れたのか、ベッティのここら辺りの行き来は自由だった。神官たちは迎えに来て、目隠しをしたままリーゼロッテの元へと連れていくだけだ。
「なあ、知ってるか? 午後になってから王城で異形の者がまた騒ぎ出しているそうだ」
「ここ一、二年、なんだかそんな話が多いな」
のんびりとした口調のそんな会話が耳に入ってくる。ここ神殿では、王城の噂話はすべて他人事だ。そこはそれ、お互い様と言ったところか。
「そういえば、移動用の馬が一頭逃げ出したって聞いたけど、あれどうなったんだ?」
「それがまだ見つからないみたいでさ。厩舎担当が必死になって探してるけど、この雪の中だからなぁ」
「ああ、もうどこかで行き倒れたりしてるのかもな」
そんな神官たちの横を素早く通り、ベッティは急ぎ部屋へと向かった。夜半に神殿内の調査を行って、早朝にはリーゼロッテの元に行かなくてはならない。
最近では動物たちが食材を運んでくれるので、調達の手間が省けるだけでもありがたい。この時間に一度仮眠を取って、再び動き出す毎日を過ごしているベッティだった。
ふと遠くから怒号が聞こえてくる。それも大人数だ。ベッティは長く伸びる廊下の向こう、神殿の方向に耳を澄ませた。
喧騒、悲鳴、大勢のひとの行き交う気配。
神経を集中して、そんなことを感じ取る。その時遠くの廊下を、騎士服姿の人間が複数横切った。
(騎士団が来ている……!)
神殿の奥まで神官以外の人間は足を踏み入れることはない。来るべき時が来たのだ。ベッティは駆け足で部屋へと戻った。
掃除道具の下から仕事道具をかき集める。その袋を背負い、気配を殺してリーゼロッテの元へと向かった。