宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
 厚手の服を重ね着させて、自分の着ていたフード付きのマントを肩にかけた。手早くリーゼロッテの髪を一本の三つ編みにして、最後にフードを目深に被らせる。

「一度外に出てから本神殿に続く建物まで行きますぅ。追手が来たら厄介ですぅ、さぁ急いで時間はありませんよぅ」

 手を引き廊下を戻る。途中で血まみれで倒れるオスカーに、リーゼロッテが身を強張らせた。そこを無理やり引っ張って、建物の外へと連れ出していく。
 外は月のない真っ暗な世界だ。ベッティは慣れたものだが、リーゼロッテにしてみれば歩くのもままならないはずだ。

「手を引きますから信じてついてきてくださぃ。この路を行くと本神殿に続く建物に着きますぅ。中に入ったらリーゼロッテ様はぁ、真っすぐひたすら廊下を走ってくださいませねぇ」
「ベッティ、足を怪我していない?」
「先ほどオスカーとやり合いましてぇ。今は痛いとか言ってる場合じゃないのでお気になさらずですぅ」

 吐く息を白く顔に絡ませながら、ふたりは小路を進んだ。半ばまで行ったところで、ベッティが制するように足を止めた。

「ヤツの気配が近づいてきてる……?」

 媚薬畑で感じたあの神気だ。同じものを感じているだろうリーゼロッテも身を震わせていた。

「作戦変更ですぅ。このままリーゼロッテ様は森を抜けてくださいませねぇ」
 ベッティが指笛を吹くと、どこからともなく一頭の馬が現れる。

「さぁこの馬に乗ってくださいませぇ。この先にある小川に沿っていけば神殿の入り口付近、王城の手前までたどり着けますぅ。しがみついていれば馬が勝手に進みますからぁ、リーゼロッテ様は振り落とされないことだけ考えてくださいませねぇ」

 馬を伏せさせ、リーゼロッテの手を引いた。乗せようとするも拒むように、リーゼロッテはベッティの手を強く握り返してきた。

「ベッティは行かないの?」
「わたしが(おとり)になって奴を引きつけますぅ。その隙にリーゼロッテ様は騎士団に保護を求めればそれで大丈夫ですからぁ」
「駄目よ危険よ、あのひとは普通じゃないの! お願いベッティも一緒に行きましょう?」
「足を痛めているわたしは(かえ)って足手まといですぅ。ふたりで逃げても奴に捕まるだけですよぅ。このまま二度と公爵様と会えなくなってもいいんですかぁ?」

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