宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
 ぐっと(のど)を詰まらせる。だがリーゼロッテはすぐ首を振った。

「それでもベッティだけを置いていくなんて嫌よ。それならわたくしが残るから、ベッティが助けを呼んできて。ね、お願いだから囮になるなんて言わないで」
「……どうしてリーゼロッテ様はぁ、こんな時までお人がよろしいんですかねぇ。ベッティが犠牲になればリーゼロッテ様は元の生活に戻れるんですよぅ?」
「それだったらベッティだって一緒じゃない。わたくしを見捨てればベッティは危険な目に合わないもの」
「そこはそれわたしは任務ですのでぇ」
「だけどカイ様に言われたわけではないでしょう? ベッティだけが残るなんておかしいわ」
「なんで分からないんですかねぇ。リーゼロッテ様のお命とベッティの命、どっちが大事かなんて分かり切ってるじゃないですかぁ。リーゼロッテ様は望まれる側の人間。失えば多くの者が嘆きますぅ」
「命に重さなんてないわ! ベッティよりわたくしが優遇されるなんて間違ってる。それにベッティに何かあったらカイ様がかなしまれるわ!」

 涙目でまくし立てると、ベッティはうんざりしたように息をついた。

「わたし、リーゼロッテ様のその偽善っぷり、大っ嫌いなんですよねぇ。正直虫唾(むしず)が走りますぅ。このままじゃ本当にひどい目にあいますけどよろしいんですかぁ? そんな能天気なことが言えるのはぁリーゼロッテ様がこの世の地獄を見たことがないからなんですよぅ」

 冷たく言い放たれて、リーゼロッテは絶句している。涙をこぼしながら、それでも小さく首を振った。

「偽善でもいいの。ベッティだけが犠牲になるなんて嫌。それならわたくしもここに残ります。ベッティのためじゃないわ。助かった後、ベッティを見捨てた人間だってみんなに責められたくないって思う、わたくしが傷つきたくないだけの偽善のわがままよ」
「……はぁ、本当にリーゼロッテ様はぁ馬鹿みたいにお人がよろしんですねぇ」

 仕方ないと言ったように、ベッティは呆れ交じりに微笑んだ。

「分かりましたぁ、ベッティも馬に乗って一緒に参りますぅ。ふたりで無事生還をいたしましょうねぇ」
「ありがとうベッティ!」

 リーゼロッテを(くら)に乗せ、ベッティはその後ろに(またが)った。馬を立ち上がらせ、鼻先を王城のある方へと向ける。

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