宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
鶏がいいから先に進めと指示してくる。確かにこのままここにいても仕方ないと、マテアスは鶏の導きのまま森の中を進んだ。
ほどなくして鶏は、道なき道を指し示した。道を外れると頭を強く掴まれるため、仕方なく雪の中に足を踏み入れる。誰かが一度通った跡がある。それも複数人のだ。
(獣の足跡もありますねぇ)
大型犬のような足跡に、狼でないことを祈る。茂みを揺らしながら前進すると、ふいに目の前に殺気を感じた。
繰り出された拳を咄嗟に受けて、組み手を取ったまま対峙する。すぐに息を飲んだのは、目の前の相手も同じだった。
「マテアス?」
「エーミール様?」
ふたりの声が重なった。ぽかんと見つめ合って、互いに状況を把握する。同じ場所を目指し踏み込んだのだ。出くわしたところで不思議はない。
「ジークヴァルト様はどうした」
「それが敷地に入ってすぐにあり得ない数の異様に襲われまして……」
「はぐれたのか?」
「先ほどまで一緒だったのですが、紅の異形の瘴気に引き離されたようです」
「紅の異形? 本体が現れたのか?」
エーミールの問いかけにマテアスはいえ、と首を振った。不可解なことが多すぎて、さすがのマテアスも適切な判断が付けられないでいる。
「役立たずだな」
「申し訳ございません。それでエーミール様はこのような場所で一体何を?」
「今リーゼロッテ様のあとを追っている」
「こんな獣道をですか?」
「詳しくは忌み児に聞け」
足早に進むエーミールの後についていくと、できた雪道の先にひとりの騎士がいた。その前を犬が歩いている。
「やぁ、従者君」
「デルプフェルト様……ご無沙汰しております」
「その様子じゃジークヴァルト様もまだ、リーゼロッテ嬢と会えてないみたいだね」
「おっしゃる通りです……」
難しい顔でマテアスは頷いた。
「その格好で騎士に見つかったら、ちょっと庇いきれないかもよ?」
「そうだな。マテアス、お前はこれでも着ていろ。後でどうとでもして神殿から連れ出してやる」
神官服を差し出され、マテアスはおとなしくそれを身に纏った。これで騎士に連行される神官の出来上がりだ。ジークヴァルトの安否が心配だが、目的はリーゼロッテを取り返すことだ。今はふたりについて行くしかないだろう。
「それで何を追っているのですか?」
「ベッティのにおいを追ってるところ」
「ベッティさんの?」
「神殿の奥に潜入させてたんだ。恐らくベッティはリーゼロッテ嬢と一緒にいた」
カイの言葉にマテアスはエーミールの顔を見た。エーミールもいまだ半信半疑の表情だ。
その時、近くの空で破裂音がした。次いで煙のようなにおいが流れてくる。
「ベッティ!」
いきなり駆けだしたカイに遅れて、マテアスとエーミールは慌ててその背を追っていった。
ほどなくして鶏は、道なき道を指し示した。道を外れると頭を強く掴まれるため、仕方なく雪の中に足を踏み入れる。誰かが一度通った跡がある。それも複数人のだ。
(獣の足跡もありますねぇ)
大型犬のような足跡に、狼でないことを祈る。茂みを揺らしながら前進すると、ふいに目の前に殺気を感じた。
繰り出された拳を咄嗟に受けて、組み手を取ったまま対峙する。すぐに息を飲んだのは、目の前の相手も同じだった。
「マテアス?」
「エーミール様?」
ふたりの声が重なった。ぽかんと見つめ合って、互いに状況を把握する。同じ場所を目指し踏み込んだのだ。出くわしたところで不思議はない。
「ジークヴァルト様はどうした」
「それが敷地に入ってすぐにあり得ない数の異様に襲われまして……」
「はぐれたのか?」
「先ほどまで一緒だったのですが、紅の異形の瘴気に引き離されたようです」
「紅の異形? 本体が現れたのか?」
エーミールの問いかけにマテアスはいえ、と首を振った。不可解なことが多すぎて、さすがのマテアスも適切な判断が付けられないでいる。
「役立たずだな」
「申し訳ございません。それでエーミール様はこのような場所で一体何を?」
「今リーゼロッテ様のあとを追っている」
「こんな獣道をですか?」
「詳しくは忌み児に聞け」
足早に進むエーミールの後についていくと、できた雪道の先にひとりの騎士がいた。その前を犬が歩いている。
「やぁ、従者君」
「デルプフェルト様……ご無沙汰しております」
「その様子じゃジークヴァルト様もまだ、リーゼロッテ嬢と会えてないみたいだね」
「おっしゃる通りです……」
難しい顔でマテアスは頷いた。
「その格好で騎士に見つかったら、ちょっと庇いきれないかもよ?」
「そうだな。マテアス、お前はこれでも着ていろ。後でどうとでもして神殿から連れ出してやる」
神官服を差し出され、マテアスはおとなしくそれを身に纏った。これで騎士に連行される神官の出来上がりだ。ジークヴァルトの安否が心配だが、目的はリーゼロッテを取り返すことだ。今はふたりについて行くしかないだろう。
「それで何を追っているのですか?」
「ベッティのにおいを追ってるところ」
「ベッティさんの?」
「神殿の奥に潜入させてたんだ。恐らくベッティはリーゼロッテ嬢と一緒にいた」
カイの言葉にマテアスはエーミールの顔を見た。エーミールもいまだ半信半疑の表情だ。
その時、近くの空で破裂音がした。次いで煙のようなにおいが流れてくる。
「ベッティ!」
いきなり駆けだしたカイに遅れて、マテアスとエーミールは慌ててその背を追っていった。