宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
      ◇
 煙を頼りに雪の中を突き進んだ。いきなり開けた森の中、ベッティの姿を探す。あたりに黒い煙が立ち込めている。これはデルプフェルト家秘伝の煙玉だ。
 先回りしたリープリングが一点に向かって吠え続ける。カイは一目散に駆け寄った。

「ベッティ……!」

 力なく雪にうずもれる体を抱き起した。痛みからか、蒼白な唇がわずかに動く。外套(がいとう)を脱ぎ、手早くベッティを包み込んだ。怪我もひどいが触れる体が冷たすぎる。

「あるぇ? ここは天国ですかぁ?」
「ベッティ!」

 沈みそうになる意識に必死に呼びかける。応えるようにベッティは、カイの腕の中、力なく親指をゆっくり立てた。

「カイ坊ちゃまぁ……わたし、やりましたよぅ……坊ちゃまの見立て通りぃ……奴は真っ黒もいいとこでしたぁ。リーゼロッテ様はぁ馬に乗せて川沿いに逃がしましたぁ……薬草畑は奴に燃やされてしまってぇ……そこの雪の下にうずもれてますぅ」
「ああ、分かった。今はもう何も言わなくていい」
「ですがぁこれが最期かと思うとぉ……少しぐらいは伝えとかないとぉ」
「最期になんかにさせないよ。ベッティは必ず助けてみせるから」

 いつになく真剣なカイを見上げて、ベッティは意地悪そうな笑みを作る。

「カイ坊ちゃまはぁ、(のこ)される者の痛みをぉ……少しは味わった方がよろしいのですよぅ……」

 ふぅと息をついてベッティは再び瞳を閉じた。ひそやかな呼吸は続いている。ベッティを抱え、カイは立ち上がった。
 向かう先にバルバナスが現れた。騎士たちを引き連れて、ようやくここに辿りついたようだ。

「うちの手の者です。媚薬畑は燃やされ、そこの雪の下にあったそうです。オレたちが通ってきた先に建物があります。そこに神官を数人拘束中です。詳しくはブラル殿に確認を。あとそこに幽閉されていたリーゼロッテ嬢は、馬で川沿いに逃がしたとのことです。じゃあオレはもう行きますから」

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