宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「みなさん! 今こそ出番です!!」

 号令と共に、周囲にいた使用人たちが飛び跳ねる家具を抑えにかかる。これはマテアスが考案した公爵家の呪い対策だ。ガタガタと揺れる調度品を守るべく、おのおのが必死の形相で抱え込んでいる。

「旦那様、リーゼロッテ様のお祝いの日にサロンまで破壊する気ですか? ご自制いただけないのでしたらこの場は撤収いたしますよ」

 周囲に聞こえない低い声でくぎを刺すと、サロンがすっと沈静化する。それを満足げに見回すと、マテアスはエデラー男爵を振り返った。

「では男爵様。さっそくお品を見せていただいてもよろしいですか?」
「承知した。ハンス、こちらに品を」

 後ろに控えていた男、ハンスは慣れた手つきで所狭しと品々を並べていく。

「好きなものを好きなだけ選ぶといい」
「これでは選べませんわ」

 膝の上でがっちりホールドされたままのリーゼロッテは、ジークヴァルトを見上げ可愛らしく唇を尖らせた。その瞬間、サロンが揺れ動き、驚きで思わず胸にしがみつく。

「今日はやけに呪いが多い日ね……」
「旦那様」

 すぐにでもリーゼロッテの唇をふさぎにかかりそうな勢いのジークヴァルトに、マテアスが冷ややかな視線を向ける。するとサロンは再び静けさを取り戻した。

「降りなくてもいいだろう。全部買ってもいい」
「それで使われなかったら、物たちがかわいそうですわ。きちんと選ばせてくださいませ」

 そう言うとしぶしぶ腕から解放された。目の前に並ぶ品々に心が躍る。アクセサリーをはじめ、部屋飾りや置き物、人形から小物類まで、様々なものが取り揃えられていた。
 きっとエラがリーゼロッテの好きそうなものを伝えて用意してくれたのだろう。顔を向けると、そばに来てエラはいろいろと解説してくれた。

 アクセサリー類はジークヴァルトの守り石があるので、特にほしいとは思わない。小物を中心にリーゼロッテは手に取った。

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