宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
 しかしその事件は唐突に起きた。ザイデル家が謀反(むほん)を起こし、ハインリヒ王子の命を狙ったのだという。貴族の間に激震(げきしん)が走るのと同時に、神殿内にもその噂はひっきりなしに流れてきた。

 (さいわ)い王子は怪我ひとつしなかった。それが分かると、みなの関心はザイデル家の行く末に集まった。二歳の王子は王妃の離宮で育てられている。セレスティーヌ王妃の元に頻繁に通うイジドーラが、刺客を手引きしたのだと真っ先に嫌疑(けんぎ)がかけられた。

 神殿の外で起きている出来事など、どうすることもできはしない。だがあのやさしい彼女がそんなことをするはずはないと、ミヒャエルはイジドーラのため、一心に祈りを捧げる日々を過ごした。

 しばらくしてセレスティーヌ王妃自らが、イジドーラの身の潔白を証明したとの噂が立った。青龍に祈りが届いたのだ。ミヒャエルは心からよろこんだ。
 だが貴族社会での彼女の立場は、反逆者の一族として危ういものとなってしまったらしい。それ以来どれだけ待とうと、あのガゼボにイジドーラがやってくることはなかった。


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