宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
 その翌年、セレスティーヌ王妃が身罷(みまか)られた。ほどなくしてミヒャエルの耳に信じがたい話が飛び込んでくる。王妃という後ろ(だて)を失くしたイジドーラを、糾弾(きゅうだん)する声が再び上がっているというのだ。

 謀反(むほん)を起こしたザイデル公爵は貴族籍を剥奪(はくだつ)され、疎遠になっていた弟がその地位を継いだと聞いていた。イジドーラも事件には関わっていなかった。それですべてが終わったのだと、安堵(あんど)していた矢先のことだ。

「ザイデル公爵令嬢が死刑に……?」
「ああ、前公爵の死と共にそれを望む貴族が多いらしい」

 神官たちの噂話にミヒャエルは(おのの)いた。真偽を確かめるために神官長の元へと向かう。当時の神官長は公明正大な男だった。彼に掛け合えば、彼女の窮地(きゅうち)を救えるかもしれない。

「事実がどうあれ、貴族の問題に神殿が関わるわけにはいかない」

 だが神官長から返ってきたのはそんな慈悲のない言葉だった。イジドーラがどれだけ清い人間なのか、今までの経緯も含めてすべて訴えた。だが神官長はイジドーラのために指一本動かすつもりはないのだと分かって、ミヒャエルは再び絶望の(ふち)に立たされた。

(このままではイジドーラ様が殺されてしまう)

 噂には尾ひれがつくものだが、亡くなった王妃のお気に入りだったイジドーラを、目の(かたき)にしていた貴族は多い。ザイデル公爵家の勢いを、更に()ぐ目的もあるようだ。
 貴族とはなんと恐ろしい人種なのか。たかが権力のために、あの美しい命が奪われるなど断じて許されるべきではない。

(そうだ……彼女が貴族でなくなれば助けることができるかもしれない)

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