宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
 神官だとしても結婚し家庭を持つことは普通にできる。神殿に家族を住まわせるわけにはいかないが、妻や子を持つ神官は少なくない。

 しかし彼女は地位の高い貴族だ。神官の妻に迎い入れるにも、それ相応の立場が必要だ。神官長にはすでに妻がいる。だがほかにイジドーラを任せられるような人格者は見当たらなかった。

(それならば、わたしが彼女を救うしかない)

 神官長は健在ではあるもののそこそこ老齢だ。これまで堅実に努力してきたおかげで、自分は次期神官長候補として名が挙がっている。もう一度真摯(しんし)に頼めば、イジドーラのためにその座を譲ってくれるに違いない。

 だがミヒャエルのその希望は、神官長にすげなく一蹴(いっしゅう)された。そんな(よこしま)な思いを持つ者にこの座は譲れない。そのことがきっかけで、ミヒャエルは逆に候補から外されることになってしまった。

 どうしてこの思いが邪だと言うのか。手をこまねいているうちに、イジドーラの死刑の噂は色濃くなってきている。もう一刻の猶予もない。ミヒャエルはイジドーラのために、神殿の中で確固たる地位を築くことを強く誓った。

(何も神官長でなくてもいい。それに準ずる力を手に入れさえすれば……)

 そうすればイジドーラを妻へと迎え入れられる。自分の力で彼女の命を助けられるのだ。

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