宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
 アルフレートはジークヴァルトが買ってくれた大きなクマの縫いぐるみだ。貴族街の雑貨屋の棚に座っていたアルフレートを、あの日リーゼロッテは欲しいとは言わなかった。確かに後ろ髪をひかれたが、成人にもなって縫いぐるみが欲しいと言うのは恥ずかしかったからだ。

 だが公爵家に戻ってみると、部屋のソファにアルフレートが鎮座していた。あの時の衝撃は今でも忘れられない。とてもうれしくて、部屋中アルフレートを抱えて歩き回ったことは今でも記憶に新しかった。

(そのほかにも、いいと思ったものがいっぱい置いてあったのよね……)

 やはりジークヴァルトは以前から、自分のことを気にかけてよく見てくれていたのだ。それは義務などではなく、純粋な好意からくるものなのだと、改めてよろこびが込み上げてくる。

 ジークヴァルトと目が合った。赤いリボンを手に、買ってもかまわないかという意味合いで小さく小首をかしげる。

「ああ、それも買うといい」

 その仕草を間違えなく理解してくれたことがうれしすぎて、自然とジークヴァルトの元へと歩み寄った。座ったままの大きな手を取り、きゅっと胸の前で握りしめる。

「ありがとうございます、ジークヴァルト様。本当にうれしいですわ」

 頬を染めながらはにかむ笑顔を向けた途端、盛大に公爵家の呪いが発動した。揺れるサロンに驚いてジークヴァルトの胸に飛び込むと、マテアスの静かなひと睨みでその場は沈黙する。

「本当に今日は多いわね……」

 呪いが起きる原因は、ジークヴァルトによって箝口令(かんこうれい)が敷かれている。何も知らないリーゼロッテだけが、不思議そうに小首をかしげた。

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