宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
 意味が分からずリーゼロッテはうまく言葉を返せなかった。ふと視線を感じると、ディートリヒ王と目が合った。遠くを見つめるような慈愛に満ちた金の瞳に、思わず顔が赤らんでしまう。

 いきなりジークヴァルトに腰を引き寄せられた。王前で絶対にすべきではない行為に、リーゼロッテは身を強張(こわば)らせる。

「ほんと、狭量だこと」

 おもしろいものを前にしたかのように、王妃は口から息を漏らした。こらえきれずに出てしまったようなその笑いに、リーゼロッテはただ困惑顔を返した。

 (とが)められることもないまま、王と王妃の前を辞する。会話が届かないような位置まで移動してから、リーゼロッテはジークヴァルトに唇を尖らせた。

「ヴァルト様、王の前であのような行為はいけませんわ」

 (たしな)めるように言うと、ジークヴァルトは無言ですいと顔をそらした。

「そろそろ帰るぞ」
「王太子殿下にご挨拶はよろしいのですか?」
「ああ、昨日、仕事を増やすなと言われた」

 王妃の列とは別に、王子の前にも大行列ができている。その横でにこやかに対応しているアンネマリーの姿が目に入った。

(ゆうべたくさん話せたものね)

 王子もアンネマリーも、浮ついた気分で参加している自分とは違うのだ。王族として責務を果たしているふたりを(わずら)わせるのは確かに悪い気がしてきた。

「行くぞ」
「はい、ヴァルト様」

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