宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
 見つめ合ってから歩き出す。自分の歩調に合わせてエスコートしてくるジークヴァルトに、なんだかくすぐったい気持ちになった。
 ジークヴァルトが好きだ。好きで好きでたまらない。
 日増しに強くなっていく思いに、リーゼロッテはしあわせを噛みしめていた。

 進むたびに周囲の貴族がこちらに注意を向ける。時に令嬢がジークヴァルトに向けて熱い視線を送ってきた。
 今、横に歩いているのこの格好いい(ひと)は、自分の婚約者なのだ。それもただ龍に決められたというだけではない、思いが通じ合った正真正銘の恋人だ。

 これが優越感というやつなのだろう。誰からも羨望のまなざしを受けているように思えて、リーゼロッテは胸に手を当て息切れしたように浅い呼吸を繰り返した。

(どうしよう! しあわせすぎて逆に不安になってくるっ)

 思わず隣を見上げると、ジークヴァルトも視線を落としてきた。

「どうした? 疲れたのか?」
「いえ……ジークヴァルト様が……」

 そこまで言ってはっとなる。しばし無言でジークヴァルトと見つめ合った。
(今、何を言おうとしたの?)

 ジークヴァルトが格好良すぎて? それとも好きすぎて?

(そんなこと言えるわけない!!)
 ぼぼんと真っ赤になって、緑の力が飛び出した。そのままよろけそうになり、慌てたジークヴァルトが抱きとめてくる。

「だ、大丈夫ですわ……」 
 はふはふと息を吐きながら、リーゼロッテはなんとか呼吸を整えた。それこそ全集中だ。

「いや、まったく大丈夫ではないだろう」
 屈みこみながら手を伸ばしてきた。しかしここで抱き上げられるのはさすがに恥ずかしすぎる。

「いいえ、本当に落ち着きましたからっ」
 強く言うと不服そうにしながらも、ジークヴァルトはエスコートの体制に戻った。

(力の制御ももうちょっと頑張らないと)

 バストアップにばかり力も入れていられない。いつ龍から婚姻の託宣が降りるかは分からないが、まずは力を使いこなす方が優先だろう。
 決意も新たに会場を出る。そのまま廊下を進み、馬車が待つ王城の正面玄関を目指した。

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