宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
◇
通された部屋では、プラチナブロンドの美しい女性が待っていた。ハインリヒ王子に似た顔立ちで、だがその瞳は王子よりも青みの深い紫をしている。
手にしていた丸い何かをテーブルに置くと、女性は静かに立ち上がった。それはスノウドームのようで、中で白い雪が対流するように舞っている。
「クリスティーナ様、リーゼロッテ・ダーミッシュ様をお連れいたしました」
「王女殿下、お初にお目にかかります。お召しにより参上いたしました」
王族に対する最大級の礼を取る。すぐにひそやかな笑い声が王女の口から漏れて出た。
「そんなにかしこまらなくていいから顔をお上げなさい。それに初めましてではないのだけれど。わたくしとも、アルベルトともね」
「え……?」
そう言われても、過去に第一王女と会った覚えなどない。だが王女の言うことに異議を唱えることもできず、リーゼロッテはなんとか記憶を辿ろうとした。
「クリスティーナ様……」
咎めるようなアルベルトの呼びかけに、クリスティーナは鈴やかな笑い声をあげる。
「そうね、分からなくても仕方ないわ。でもこうすれば、あなたも思い出すのではないかしら?」
そう言って王女は、肩にかけていた白いショールをヴェールのように頭にかぶった。次いで置かれたスノウドームの上で、交差するように指を滑らせる。
右手に飾られたハンドチェーンの輝石が、美しくきらめきを返す。その姿はまるで水晶を覗く占い師のようで、手の動きを目で追いながら、リーゼロッテは思わず大きな声をあげてしまった。
「貴族街の聖女!?」
「思い出してもらえたようね、貴族のお嬢様」
いたずらな笑みを向けられて、リーゼロッテは不敬になるのも忘れ、王女の前でぽかんと口を開けた。ジークヴァルトに連れられて貴族街に出かけたときに、社交界で話題の占いを受けに行った。そのときに出会った占い師が貴族街の聖女だ。
通された部屋では、プラチナブロンドの美しい女性が待っていた。ハインリヒ王子に似た顔立ちで、だがその瞳は王子よりも青みの深い紫をしている。
手にしていた丸い何かをテーブルに置くと、女性は静かに立ち上がった。それはスノウドームのようで、中で白い雪が対流するように舞っている。
「クリスティーナ様、リーゼロッテ・ダーミッシュ様をお連れいたしました」
「王女殿下、お初にお目にかかります。お召しにより参上いたしました」
王族に対する最大級の礼を取る。すぐにひそやかな笑い声が王女の口から漏れて出た。
「そんなにかしこまらなくていいから顔をお上げなさい。それに初めましてではないのだけれど。わたくしとも、アルベルトともね」
「え……?」
そう言われても、過去に第一王女と会った覚えなどない。だが王女の言うことに異議を唱えることもできず、リーゼロッテはなんとか記憶を辿ろうとした。
「クリスティーナ様……」
咎めるようなアルベルトの呼びかけに、クリスティーナは鈴やかな笑い声をあげる。
「そうね、分からなくても仕方ないわ。でもこうすれば、あなたも思い出すのではないかしら?」
そう言って王女は、肩にかけていた白いショールをヴェールのように頭にかぶった。次いで置かれたスノウドームの上で、交差するように指を滑らせる。
右手に飾られたハンドチェーンの輝石が、美しくきらめきを返す。その姿はまるで水晶を覗く占い師のようで、手の動きを目で追いながら、リーゼロッテは思わず大きな声をあげてしまった。
「貴族街の聖女!?」
「思い出してもらえたようね、貴族のお嬢様」
いたずらな笑みを向けられて、リーゼロッテは不敬になるのも忘れ、王女の前でぽかんと口を開けた。ジークヴァルトに連れられて貴族街に出かけたときに、社交界で話題の占いを受けに行った。そのときに出会った占い師が貴族街の聖女だ。