宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
     ◇
 小鳥たちのさえずりの中に、コッコッコ、と(にわとり)の鳴く声が混じる。続けてコケコッコーと雄鶏(おんどり)が鳴き始めた。結構な音量だ。まだ眠っていたくて、リーゼロッテは上掛けの毛布にもぐるように寝返りを打った。
 それでも鶏の声は耳に入ってくる。飽くことなく繰り返される鳴き声に、リーゼロッテの眉間にはうなされるようにしわが刻まれた。

「オエオッオーっ!!」

 駄目押しのごとく野太い声が響く。オの字に濁点でもついていそうな雄叫(おたけ)びに、リーゼロッテは(たま)らずがばりと身を起こした。

(うるさくて眠れないっ)

 寝台から降りて、小さなテラスの扉を開けた。初秋の肌寒い早朝の空気に身が震える。羽織ったショールの中で体を小さくしながら庭を見下ろした。
 東宮であてがわれたのは二階にある部屋だ。この塔は五階建てで、王女は普段最上階で過ごしているらしい。

 朝露が揺れる整えられた庭には、何羽かの鶏がいた。時折地面を(ついば)みながら、あちらこちらへと歩き回っている。

「オエオッオーっ!!」

 中でもひと(きわ)大きな鶏が、声高らかに空に向かって喉元(のどもと)()り返らせる。先ほどの雄叫(おたけ)びはあの雄鶏(おんどり)のようだ。立派な鶏冠(とさか)が目に鮮やかで、寒さもあってリーゼロッテはすっかり目が覚めてしまった。

 ここ二階からでは遠くまでは見渡せないが、広がる景色に王城から随分と遠くに来てしまったことが分かる。ここ東宮はその名の通り国の東に位置していた。王都より西にあるフーゲンベルク領とは正反対の場所だ。

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