宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
「ジークヴァルト様……」

 口にすると余計に会いたくなってしまう。王女は今日にでもジークヴァルトがやってくると言っていた。それを信じて待つしかないだろう。

 部屋に戻り、用意されていた普段着のドレスに着替えた。侍女もいないのですべてひとりでやらなくてはならない。

(わたしは日本での記憶があるから平気だけど……)

 もし正真正銘の深窓(しんそう)の令嬢だったら、何もできずに途方に暮れるに違いない。リーゼロッテの普段の生活は、本当に何から何まで人任せだ。それこそおはようからおやすみまで、何もしなくても一日を過ごせてしまう。

 長い髪は自分ではどうしようもないので、ゆるい一本の三つ編みを作りサイドに流した。寝るときはいつもこうして編んでいる。起き上がるときに髪を自分で()んづけて、痛い思いを何度もしたからだ。

 太陽も大分(だいぶ)高くなってきて、鶏の声も落ち着いた。ほっとしているときに、前触れなく部屋の扉が開かれた。ノックもなしに人が入ってきたことに、思わずびっくりしてしまう。

「あら、起きていらしたの」

 冷たい声で言われ、文句を言い出すタイミングを(いっ)してしまった。部屋に入ってきたのはエラと同じくらいの年齢の女性だった。着ているドレスからして未婚の令嬢のようだ。

「わたくしはヘッダ・バルテン。子爵家の人間です。普段はクリスティーナ様の侍女をしておりますが、今日からあなたのお世話もさせていただきます」

 年上とはいえ、下位の令嬢にしては居丈高(いだけだか)な態度に戸惑いしかおこらない。

「他にひともいないのでわたくしが選ばれました。仕方がないですけれど、やらせていただきますわ」

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