宿命の王女と身代わりの託宣 -龍の託宣4-
 顔を上げるとやさしく見つめ返される。ジークヴァルトが面倒くさいなどと思うはずはない。勝手に疑っている自分がなんだか嫌になってきた。

 そっと髪を撫でられる。猫の子に触れるような手つきが心地よくて、リーゼロッテは目を細めた。ジークヴァルトの手つきに性的なものを感じたことはない。以前は子供扱いされているのだと思っていたが、両思いになった今でもそれは変わらなかった。

(もしかしてジークヴァルト様って、そういうことに淡白(たんぱく)なのかしら……?)

 男なら誰でもその手のことが好きというわけでもないだろう。自分に女としての魅力がないのなら、それは大問題ではあるが。

 髪を()かれながら黙って見つめ合っていると、ふいに扉が叩かれた。時計を見やると一時間経っている。ジークヴァルトはもう帰ってしまうのだ。しあわせな気持ちから一気に悲しくなって、リーゼロッテは小さく唇をかみしめた。

 開きかけた扉からアルベルトの姿が見えた。と同時に腕を引かれて、突然ジークヴァルトに引き寄せられる。

「んんっ!?」

 いきなり唇を塞がれた。うなじを固定され逃げることも叶わない。アルベルトが部屋に入ってくる。必死にジークヴァルトの胸を叩くが、口づけが深められただけだった。

「あっふ、んむぅ」
 色気もない声が鼻から漏れて出る。

(見てる! めっちゃ見られてる!)

 そんな脳内の叫びも熱い唇に絡めとられて、あっという間に消え去った。

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