可愛い後輩くんは、スポーツ系御曹司でした ~秘密のギャップで溺愛されています~

第4話:接近

 翌日、私はドキドキしながら出社した。

田中(たなか)先輩! おはようございます!」

 もう机に着いている蓮見(はすみ)くんが元気よく挨拶してくれた。
 いつもと変わらない彼の様子に胸を撫で下ろす。

 私はキリッと顔を引き締めた。

「おはよう。企画書、持ってきてくれた?」
「はい」

 蓮見くんがファイルに入れた企画書を手渡してくれる。

「楽しそうですよね、カフェの新店」
「ええ。好評なら店舗を増やしていくそうだから、重要な一歩よ」

 ヘルシーな定食が売りのイチイ食堂だが、このたびカフェ形態の新店を出すことになったのだ。
 その名も『イチイカフェ』。

 都市部で働く女性に向けたカフェで、上質な商品とくつろぎを提供する、とスタートアップの資料には書かれていた。
 現在、カフェで出すメニューや内装のコンセプトを話し合い中だ。

「せっかくだから、派手なオープニングセレモニーをしてもいいと思うんですけどね」
「そうね。何らかのイベントは必要ね」

 私は企画書をめくりながらうなずいた。

「商品に自信があるなら、コーヒーの試飲とかどうですかね?」
「特別メニューもありよね。すべてのコーヒーを少量ずつ飲める飲み比べセットとか、ミニデザートが載ったデザートプレートとか」
「いいですね!」

 蓮見くんの笑顔に、思わず昨日の水着姿を思い浮かべてしまった。
 ダメだ、仕事に集中しないと。

「じゃあ、それもまとめておいてくれる?」
「はい!」
「じゃあ、私はこれから会議だから」

 まだ会議には時間があったが、私は席を立った。
 でないと、余計な想像をしてしまうから。

 私、なんだかおかしい。
 昨日の夜まで、蓮見くんはただの可愛い後輩だった。
 なのに、あの二人きりのレッスンで、私の中の何かが変わった。

(馬鹿馬鹿! 四歳年下の部下なのよ? 意識しない!)

 私は気分転換にコーヒーを買いに行くことにした。
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