継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします
「嘘です。こんな……これは、私に化けた誰かでございます。偽りです!」

 しなだれて、ふくよかな胸を揺らしたケリーアデルは、まるで男を誘うような眼差しをペンロド公爵様へと向けた。
 その瞳に飲まれるように、公爵様は押し黙って動かなくなる。

 さっきまで、夫人を振り返っておろおろと助けを求めていたのに、どういうことだろう。まるで、操り人形になったように、ペンロド公爵様はぼんやりとした目をケリーアデルに向けていた。

 ケリーアデルの赤い唇が弧を描く。

 よく見れば、(くら)い陽炎が公爵様の体を飲み込もうとしているではないか。彼女が何かをしたのだろうか。

「信じてください。私は、ずっと、ずっとベンロド公爵様のために──」
「お黙りなさい、ケリーアデル!」
「……ドロセア様?」

 ケリーアデルの瞳から光が失せた。
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