継母に無能と罵られてきた伯爵令嬢ですが、可愛い弟のために政略結婚をいたします
 もしもヴィンセント様が手を差し伸べてくれなかったら、私は修道院送りになっていたかもしれない。ケリーアデルに家を奪われ、弟の帰る場所を失っていたかもしれない。

 それを考えると感謝が尽きることはなく、胸の奥に熱いものが込み上げてくる。

「結婚の条件を守っただけだ。そう畏まることはない」
「私ヴェルヘルミーナは、これよりヴィンセント様の妻として、ロックハートの為に」

 決意を告げようとした私の頭に、大きな手が優しく触れた。

 優しく撫でつける手のぬくもりに、ふとお父様を思い出す。幼い頃はよく頭を撫でてくれていた。それを、なぜこのタイミングで思い出すのだろうか。

 じわりと涙が込み上げてきた。

 私はヴィンセント様に嫁いだ。もう、レドモンドの娘ではない。これから、私はロックハートのために生きなければならない。

 決心していたつもりなのに、どうしてそれを告げようとすると胸が苦しくなるのか。
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