6月25日、彼は。
「ごめんね、伶菜。俺は伶菜にある嘘をついたんだ」

珀人が時計に向けていた視線を私に移す。

「12月25日に俺と伶菜が付き合ったのも本当。6月25日に俺と伶菜が死んだのも本当。嘘は……」




「自殺するのが『丹野 珀人』で、巻き込まれたのが『会田 伶菜』。伶菜は俺の手を掴もうとして、一緒に落ちた」




「俺の目的は、『丹野 珀人』の自殺に『会田 伶菜』を巻き込まないこと。『丹野 珀人』に『会田 伶菜』を近づけないこと。俺は伶菜の命だけを助けるために戻ったんだ。それだけが後悔だったから。伶菜を巻き込んで死んだことだけを言葉にならないほど後悔した」

珀人の今までの言葉が頭を流れていく。珀人との会話の意味が繋がっていく。

【だからさ、お互いのためにも付き合わない方が良いと思うんだよね】

嘘つき。本当は私のためだけだったんだ。

【ねぇ、珀人。私ってなんで死ぬんだろう。今、こんなに幸せなのに】
【知らねーって】

私の自殺の理由を珀人が知っているはずがない。だって、自殺するのが私じゃないのだから。

【俺は伶菜を死なせないために戻ってきたんだ】

馬鹿。珀人は本当に馬鹿だ。自分の命は諦めているくせに私が死ぬことは許さない。

【伶菜、じゃあ一つだけ頼みがある。絶対に俺の力になろうなんて思うな】

それは自殺する丹野くんを助けようとするなという意味だったのだろう。

泣きながら珀人を睨んでいる私を珀人はまだ愛おしそうに見つめている。

「伶菜、本当にごめん。伶菜は俺が自殺するって知ったら絶対に助けようとするから、伶菜の自殺に俺が巻き込まれたことにしたんだ」

珀人の目には涙が浮かんでいた。

「俺を恨んで、伶菜」

そう言った珀人の言葉に私は返事をしなかった。
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