6月25日、彼は。
「伶菜と付き合ってから両親との不仲をいつも伶菜に相談していた。伶菜は毎回『私はずっと珀人の味方だから』と言ってくれていたんだ。でも6月25日に親に学生寮のある高校に転校させるって言われた。そこは厳しくて、誰かと連絡を取ることも出来ない監獄みたいな所だって。親とちゃんと話せば良かったのに俺にとっての希望だった伶菜から離れることになって、衝動的に死のうとしたんだ。それで最後に伶菜に『死にたい』と連絡したら助けに来た伶菜を巻き込んだ」

珀人は透け始めていた。

それは珀人がもうすぐ消えることを表しているようで。

「だから強く願ったんだ。伶菜を助けて下さいって。そしたら一年前に戻って、伶菜の前に立っていた。前の俺の性格だとまた伶菜を巻き込むと思った。だから前の人生よりずっと素直に伶菜と接することにした。一年間だけでも素直に笑顔で伶菜と過ごしたかったから」

珀人が「後はさっき話した通り」と付け足した。

珀人の後ろの景色が透けて見えている。

もう珀人の輪郭は消え掛かっていた。

沢山伝えたいことがあるのに、慌ててしまって喉が詰まったように言葉が出てこない。

それでも、やっと絞り出した言葉は一番伝えたい本心だった。




「私は『丹野 珀人』が好き。大好き。本当に…大好きな、だけ、なの……!」




顔は涙でボロボロだし、言葉も嗚咽で詰まっている。それでも、もうちょっと。これだけは伝えさせて欲しい。どうか間に合って。




「この一年間が人生で一番楽しかった!!!」


「でも、これからもっと楽しい時間を丹野くんと過ごせるように頑張る。私の隣は『丹野 珀人』しかいないから」




消えていく珀人の声が最後に聞こえた気がした。





「伶菜、幸せになって」





6月25日、珀人は消えた。
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