憧れの御曹司と婚約しました。
「でも、なんで私にそんな大事なことを……」
私は言葉を詰まらせた。颯さんがもこまるの生みの親だなんて、想像もしていなかった。しかも、彼が私の【もこまる】愛を知っていて、結婚の条件に新作グッズをちらつかせたのは、ただの気まぐれじゃなかったんだ。
「君がもこまるを大好きだってことは、陽佑から聞いてたよ。最初は、ビジネス的なパートナーとして君が最適だと思っただけ。でも、君の反応を見てたら……なんだか、もっと君ともこまるを繋げてあげたくなったんだ」
颯さんの声は穏やかで、でもどこか真剣だった。私はぬいぐるみをぎゅっと握りしめながら、頬が熱くなるのを感じた。
「それで、仕事部屋に入らないでって言ったのは……」
「ここがバレたら、ちょっと恥ずかしいだろ? 社長が夜な夜なぬいぐるみのデザインに頭悩ませてるなんて、部下には知られたくないよ」
彼はそう言って軽く笑ったけど、その笑顔にはどこか少年のような無邪気さがあって、私は初めて高梨颯という人の素顔を見た気がした。