憧れの御曹司と婚約しました。
春のイベント
春の陽気が部屋に差し込む朝、私は颯さんのマンションのキッチンで、もこまるのマグカップに紅茶を淹れていた。桜色のマグカップには、ふわふわのもこまるが微笑んでいるイラストが描かれていて、眺めるたびに心がぽかぽかする。キッチンの窓から見える都心のビル群にも、どこか春の柔らかさが漂っている気がした。
背後で足音がして、振り返ると颯さんがネクタイを締めながらリビングに入ってきた。スーツ姿の彼はいつもキリッとしているけど、今日はネクタイに小さなもこまるのピンが光っていて、思わずクスッと笑ってしまった。
「颯さん、今日はそのピンで会議?」
私がそう聞くと、颯さんはいたずらっぽくウィンクして近づいてきた。
「君が昨日選んでくれたんだろ? 部下にもこのセンス、自慢したいからね」
その言葉に、私は顔が熱くなるのを感じた。昨日、颯さんが「明日のネクタイ、どれがいい?」と聞いてきたとき、ついもこまるのピンを手に取ってしまったのだ。まさか本当に付けてくれるなんて。
「もう、颯さんったら……恥ずかしいよ」
私はマグカップを手に持ったまま、頬を膨らませて抗議した。颯さんはそんな私を見てクスクス笑い、そっと私の後ろに立ってマグカップを覗き込む。
「そのマグ、君に似合ってるな。ふわふわで、ちょっと甘い感じ」
彼の声がすぐ耳元で聞こえて、ドキッとしてしまった。颯さんがこんな近くにいるなんて、最近は慣れてきたはずなのに、なぜか心臓がバクバクする。私は慌てて話題を変えた。
「そ、そういえば! 春のもこまるのデザイン、そろそろ最終案を決めなきゃですよね?」
颯さんは「そうだな」と言いながら、私の隣に腰掛けてスケッチブックを取り出した。そこには、私が描いた桜色の毛ともこまるに小さな花びらのアクセサリーを付けた「春のもこまる」のラフ画が挟まっていた。