憧れの御曹司と婚約しました。



 その日の夕方、私を車に乗せて連れ出した。

 向かった先は、都心から少し離れた桜並木の公園。春の夕暮れ時、桜の花びらがふわふわと舞っていて、まるで絵本の世界に迷い込んだみたいだった。
「颯さん、ここ、めっちゃ綺麗……!」

 私は思わず駆け出して、桜の木の下でくるっと回った。着物じゃなくて、今日はカジュアルなワンピースにしていたから、動きやすくてつい子供のようにはしゃいでしまった。颯さんは少し後ろで私の様子を見ながら、柔らかく微笑んでいた。

「日和子、桜の下の君、なんか……もこまるみたいだな」
「えっ? どゆこと?」

 私が振り返ると、颯さんがゆっくり近づいてきた。すると、頭にふわりと桜の花びらが落ちてきて、颯さんがそっと手を伸ばしてそれを払ってくれた。
「ほら、ふわふわで、愛らしい感じ。君、桜色がほんと似合う」

 その言葉と、颯さんの指が私の髪に触れた感触に、私は顔がカッと熱くなった。夕陽に照らされた颯さんの顔が、いつもより近くて胸が高鳴った。
 なんだかドキドキが止まらない。

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