一夜限りの契約妻──冷徹御曹司の独占愛は甘すぎて逃げられない
「好きなもの、手に取っていいんだよ。」

「……はい」

促されるまま、ドレスの並ぶラックに目を走らせた。

深紅、翡翠、純白──どれもため息が出るほど素敵で、とても自分には似合わない気がしてしまう。

どれを選んでいいのか分からず、指先だけが宙をさまよった。

そんな私を見かねたのか、聖さんが一歩近づいてきた。

彼は紺色のドレスを手に取り、私の前にそっと当てがう。

「……いいね。君に合うと思うよ。」

低く落ち着いた声。その響きに胸がドキリと鳴る。

「そ、そうですか……」

視線を逸らしながら答えるけれど、心臓の鼓動は隠せない。

胸元に繊細なレースが施され、光沢のある布地が見る角度によって深い青にも紫にも見える。

気品と華やかさを併せ持つそのドレスは、私には手が届かない存在のように感じられた。

けれど聖さんは迷いなく、そのドレスを私に差し出す。

「試してみるといい。長さもちょうど良さそうだ。」

言われるまま鏡の前で当ててみると、確かに裾がぴたりと足首に落ち着き、まるで最初から私のために仕立てられたようだった。
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