一夜限りの契約妻──冷徹御曹司の独占愛は甘すぎて逃げられない
会場の中心に現れたのは、聖さんのお父様だった。

ただ歩いてくるだけで場の空気が一変する。

人々が自然と道を開け、その一歩ごとに張り詰めた緊張が広がっていく。

「……親父。」

聖さんが低い声で呼びかけると、お父様は振り返った。

その鋭い眼差しが私を捉える。

じっと、まるで値踏みするかのように見つめられ、体が固まった。

「このお嬢さんは?」

重厚な声が響く。

「妻を連れてくると言ったでしょう。」

聖さんの毅然とした言葉に、お父様の眉がぴくりと動いた。

私は震えそうになる心を必死に抑え、微笑んで一礼する。

「真帆です。宜しくお願いします。」

努めて明るく声を出した。

けれど、お父様の表情は変わらない。

静かな視線がさらに重みを増し、胸の奥に冷たいものが広がる。

「……本当に連れてくるとはな」

その低い一言に、周囲がざわめいた。

けれど私の手を支えている聖さんの掌だけは、強く揺るぎなく、温もりを伝えてくれていた。
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