一夜限りの契約妻──冷徹御曹司の独占愛は甘すぎて逃げられない
メインディッシュが運ばれてきた頃には、最初の緊張もすっかり薄れていた。

「美味しい……!」

思わず頬がゆるむと、聖さんは嬉しそうに口元を緩めた。

「気に入ってもらえてよかった。実は俺、料理の味より君の反応を見るのが楽しみでね。」

「えっ、それじゃまるで実験台みたいじゃないですか。」

「そうとも言う。」

真顔で返されて、思わず吹き出してしまう。

「笑った顔の方がずっといい。」

さらりと口にされ、また頬が熱くなる。

ワインを飲みながら、彼が冗談めかして言った。

「そういえば……居酒屋で働いてるって言ってただろう。今度、君がビールを注いでくれるのを体験してみたいな。」

「えっ、御曹司が居酒屋に? 想像できません。」

「じゃあ特別に“バイト仲間の客”として。」

「似合いませんって。」

二人で同時に笑い声を上げた。

こんなふうに肩の力を抜いて話せるなんて思っていなかった。

契約や借金なんて言葉は、今だけは遠い世界のもののよう。

テーブル越しに目が合う。

(私……本当にデートしてるんだ)

彼の瞳が柔らかく揺れて、胸がまた高鳴った。
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