一夜限りの契約妻──冷徹御曹司の独占愛は甘すぎて逃げられない
バスルームに入ると、白い蒸気がゆっくりと広がり、世界が柔らかく霞んでいく。

聖さんがシャワーをひねると、温かな水流が肩を打ち、肌を伝って流れ落ちた。

「……冷えてない?」

背後から問われ、かすかに首を振る。

本当は胸の鼓動が速すぎて、答える余裕さえなかった。

濡れた髪を指で梳かれる。水滴が首筋を滑り落ち、その跡を辿るように聖さんの唇が触れる。

「ん……」

思わず声が漏れると、彼が低く笑った。

「敏感なんだな。」

耳元に囁かれ、さらに熱が込み上げる。

肩を抱かれ、背中をシャワーに預けたまま、彼の胸板に押し寄せられる。

濡れた肌同士が触れ合うたび、境界が溶けていくようだった。

「……まだ怖い?」

「少し。でも……」

言葉の続きを待つように、彼の瞳が覗き込む。

「でも、聖さんに触れられるのは……嫌じゃない。」

その瞬間、彼の唇が再び重なった。

シャワーの音に混じって、濡れた舌が絡み合う。

熱と水滴が交じり合い、どこまでが涙でどこまでが雫なのか分からなくなる。

 彼の手が腰を抱き寄せ、全身を求められていると実感する。
 契約で始まった関係が、確かに“恋”へ変わろうとしていた。
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