Semisweet.
「何で交際の話隠したいって?俺のメリット潰されんだけど。」

「分かってるけど…、あんたはさ、社内で人気があるじゃない?」

「まあな。」

「嘘で良いから謙遜しろ。」


 清々しい程のまあなという発言に、思わずツッコミを入れてしまう。

 ジョッキ缶を渡されてそれを普通の缶の様にパカッと開いて開けると話を続けながらジョッキ缶をぶつけ合う。


「あんたと付き合ったって言って変な目で見られるのも嫌だし、そもそも私この嘘には反対だし。仕事が好きだから辞めたくなくて振られたでしょ。仕事は真面目にやりたいの。」

「みんな大人なんだからそんな事起きるか?」

「あんた、本当。女は面倒なの。それに、18とかの新入社員の女の子にもモテてる自覚ある?」

「9個上のおっさんに?物好きも居るんだなあ。」

「そうなのよ。」

「おい、否定しろ。」


 こういう小ボケみたいなのに1つ1つツッコむから私達は話が進まない。

 9個上とか気にならない程に顔が整い過ぎているのだ、この男は。


「てか、そもそも菜穂そんなに結婚したいタイプだった?」

「…したいなって思ってたよ。てかすると思ってた。子供だってほしいなって思ってたし、幸せな家庭持って、好きな仕事してって当たり前に幸せになれると思ってた。」


 4年も付き合っていたのに振られたショックはでかい。

 この歳で1人とか、もう売れ残りも近付いてきていると思ったらずっとずっと不安だった。


「そんなに結婚したいなら、俺でも良いじゃん。」

「…は!?」


 瑞野の信じられない言葉に唖然とする。どうしてそんな話になった?


「俺も恋とかそう言うの1つ1つ築くのは面倒だし、俺達なら相性良いと思うけど。仕事も家庭も。」

「冗談でしょ?相性とか、そんなんでするもんじゃなくない?」

「大事だと思うけど。てか俺、菜穂とならいいよ。」

「い、いやいや。」


 どこからツッコんで良いのか分からない言葉に頭が困惑する。

 菜穂の名前呼びも吹っ飛ぶほどの菜穂ならいいよって、何を根拠に。

 というか私はよくないって何で分かってくれないのか。


「まあ年内ってまだ、10カ月くらいあるし、もしその間俺と社内恋愛してみて無理だと思ったら次こそは婚約破棄になりましたでも良いんじゃない?」

「何、それ。付き合うって事?」

「仮でね、どうせ今日副支配人には報告しちゃったわけだし、その条件で俺との交際は秘密にして関係を続けるでも良いよ。」

「待ってよ、あんたに何のメリットがあんの。」

「楽しくなりそうじゃない?秘密の共有とか、そういうの何かわくわくすんじゃん。」


 この男、ねじが10本程飛んでいるのかもしれない。
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