Semisweet.
「…いいから食べてよ。見た目だけかもでしょ。」

「大丈夫だろ。頂きます。」


 卵焼きを箸で掴むとゆっくりと口の中に運んでいく。

 この時間がとんでもなく緊張する。

 こんな風に誰かの反応を窺いながら、この時間を待つのなんていつぶりだろう。

 いつも反応なんて待っても…。聞いたって…。

 そんな過去の記憶を思いだして、今は瑞野といるのだからとハッとする。

 いつまで私はあの男に縛られて…。


「うま。菜穂料理得意だったんだな。」

「得意とかじゃ…、普通だよ。」

「普通じゃねぇよ。俺ならまずこんな綺麗に卵巻けない。」


 他の料理もそう言いながら食べ進めて喜んでくれている。

 こんな風に褒めてもらえるなら毎日でも喜んで作るのに。


「本当あんたって不思議だよね。そこまでモテるのに最近は告られても付き合わないし、付き合ったと思ったら長続きしないし。何で?」

「好きな奴いるから?」

「え?」


 今はっきりと好きな奴いるって言ってたよね。
 じゃあ何で私とこんな事してるの。

 瑞野の行動と言動にずれを感じて困惑する。


「もう長年の片思いなんだよ。全然振り向いてくれなくて、別と付き合ってみたらとか思った事もあったけどダメで、付き合ってもその子以外にダメならと思って付き合わないだけ。」

「じゃ、じゃあ、私とこんな事してる場合じゃ…。」

「俺が菜穂とこんなことするメリット何だと思う?」

「…ずっと女性避けだと思ってた。」

「それもあるけど…、もっと大きな理由あるから考えてみ。」


 瑞野のその言葉で増々分からなくなって、私の事好きなの?とか一瞬錯覚したけど、こんな可愛げもない私を好きになる人なんて…。

 そこまで考えて瑞野が私を好きだという路線は頭から消えた。
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