Semisweet.
「…元カレの?」

「正しくは元カレに着せようと思ってたトレーナー。でも使わなくなったし、どうせ捨てるだけのがある。」


 そう言って立ち上がろうとすると腕を引かれる。

 突然の事に目を見開いて瑞野を見ると、彼は口元に笑みを浮かべていたが、目に優しさはない。

 傷付いているのか、怒っているのか、何を思っているのか分からない表情だ。


「酷い女、菜穂を好きだって言ってる男にそんなの着せて、家に泊まらせようとしてんの?全然男って意識すらしてくれてねぇんだな。」

「み、ずの…?」

「好きな女と一緒の空間に居て手を出さないほど俺は聖人じゃないんだけど。それとも計算?」


 そう言いながら私を逃がさない様に抱き寄せて、唇を優しく親指でなぞってくる。


「好きだよ。」

「…なにそれ、告白?」

「いや、ただの意思表示。菜穂が好き。」


 思わずときめいてしまった。
 ここ最近男性にときめく事も無かったのに、それもその相手が瑞野だなんて、何か気持ちに変化でもあったのだろうか。

 久しぶりのこの感覚と、思ったよりも悪くないこの気持ちに、もういっそこの男に流されちゃうのもありなのかもしれない。なんて、考えてしまう。
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